Maestraudio、約14300円のハイコスパ・モニターイヤフォン「MAPro1000」

by 山崎健太郎

MAPro1000

アユートは、オーツェイド独自のセラミックオーディオテクノロジーを使用したIEMブランド・Maestraudioの新シリーズで、「MAPro」の第1弾となる「MAPro1000」を5月11日に発売する。価格は14,300円。カラーはGaral Blue、Boost Red、Shower Blue。

さらに、4.4mmのバランス接続用ケーブル「MAPro1000 Cable 4.4」も5,500円で同日に発売する。

MAPro1000 Garal Blue

MAPro1000は、Maestraudio製IEMならではの広いサウンドステージ表現を維持したまま、より快適に耳にフィットする筐体設計を目指して開発した、モニターイヤフォン形状の新IEMシリーズ「MAPro」の第1弾製品。

多くのイヤフォン開発から得た知見を活かし、イヤーピースだけで本体を支えず、筐体形状で耳に対し固定することで、耳道の負担を軽減しつつ、より快適なフィッティングと遮音性向上を同時に実現するという形状を新たに設計。動いてもズレにくい上、長時間の使用でも耳道への負担が少なく疲れにくいのが特徴という。

Boost Red
Shower Blue
装着イメージ

ドライバーはハイブリッド構成。深く沈み込む低域再生を実現するという10mm径グラフェンコートダイナミックドライバーを搭載するほか、独自技術のパッシブ型セラミックコートツイーターを組み合わせ、MAProシリーズ用に新開発した5.8mm径RST(Reactive Sympathetic Tweeter)を初搭載している。

前述の通り、筐体の形状がモニターイヤフォン型になり、これまでよりも小型化し、音の空間表現が難しくなったが、「新開発5.8mm RSTの搭載によってこれを解消、小型軽量な筐体ながらも広いサウンドステージと音に包まれるようなイマーシブサウンドを実現した」という。

このパッシブ型セラミックコートツイーターは、Maestraudio独自の圧電セラミックス技術を使って作られており、振動板の寸法や材質、支持方法により音質をコントロール出来るのが特徴。パッシブ型であるため、ダイナミックドライバーからの音波を振動板に照射して振動を誘発させている。

同軸上から外れても高音が効率的に前方に伝わり、「シンバルやオルゴール等のように分割振動を有するのが特徴」だという。

モニターイヤフォン形状を採用した事で、耳道に対して音響ステムの角度を設けてフィット感を高めているが、これらの筐体仕様の変更に伴い、RSTの基本設計も見直されている。一般的に狭い筐体内部では反射面の面積が少なくなるため、音の拡散が得られにくく、RSTが持つ本来の分割振動の音を活かすことが難しくなる。

そこで、新たなセラミックコートツイーターは、音響・振動シミュレーションを駆使し、狭容量の筐体でもMA910Sシリーズ相当の高音域の分散と音圧が得られるよう最適化している。インピーダンスは22Ω、感度は111dB。周波数特性は20Hz~40kHz。

MA910Sの内部
MAPro1000の内部。耳道に対して音響ステムの角度を設けてフィット感を高めている

ケーブルは着脱が可能で、MMCXコネクターを採用。付属ケーブルの「MAPro1000 Cable」は、高伝導のOFC線を導体に採用した4芯構成で、ケーブル被膜は取り回しやすい適度な柔らかさを備えている。入力端子は3.5mm 3極のL字型。長さは1.2m。

イヤーピースには、密閉度を上げる為シリコンゴムの硬度を再調整したオリジナルイヤーピース「iSep02」を4サイズ(S/MS/M/L)と、より高遮音を目的としたフォームタイプイヤーピース「iFep01」を3サイズ(S/M/L)同梱。オリジナルキャリングポーチも付属する。

MAPro1000 Cable 4.4

OFCを導体に採用したMAPro1000 Cableの4.4mmバランス接続タイプを別売する。4芯構成で、「自然で癖の少ない滑らかなサウンドが特徴」という。

被膜は取り回しやすい適度な柔らかさを備えている。イヤフォン側のコネクターはMMCX。プラグ部は4.4mm 5極L字のバランスプラグ。長さは1.2m。

MAPro1000 Cable 4.4

ファーストインプレッション

短時間だが、MAPro1000を試聴したので印象をお伝えしよう。

「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生して、すぐにわかるのは、モニターイヤフォンとして非常に高い実力を備えている事だ。音に色付けが少なく、レンジも広く、全体のバランスもニュートラル。特定の帯域だけ盛り上がるような事はなく、イヤフォンとしての素の再生能力が非常に高い。

ボーカルや楽器の音像はやや近めで、ダイレクトな音が前に来るタイプ。音像の輪郭は非常にシャープで、無駄な響きや膨らみもない。微細な音を聞き取るためのモニターイヤフォンとして、使いやすいサウンドだ。

前述の通り、これまでの製品と比べて筐体はコンパクトになっているが、音場が狭いとは感じない。ボーカルや楽器の音像は近めだが、その背後に音が広がっていく様子が良く見えるので、閉塞感は無い。「月とてもなく」では、左奥にボーカルの声の響きがフワッと広がっていくのだが、その細かな描写もよく見える。

既存モデルで、リケーブル可能な「MA910SR」と聴き比べると、色付けの少なさやバランスの良さといった面は非常に似ている。一方で、ボーカルや楽器の音像がやや遠く、音がフワッと広がる優しさも備えたMA910SRに対して、MAPro1000は音像が近く、ダイレクトなサウンドがメインとして耳に届き、よりクリアでメリハリの聴いたサウンドという違いがある。

端的に言えば「MA910SRはリスニング向け」、「MAPro1000はモニター向け」となるが、MAPro1000自体は低域が薄いとか、高域がキツイといった、何か尖った傾向があるわけではないため、MAPro1000でも十分に音楽は楽しめる。逆に言えば、ダイレクトさが欲しい、解像度を追求したいとい人が、普段使いするイヤフォンとしてもMAPro1000は魅力的だろう。そして、このサウンドで14,300円という価格は、驚きのコストパフォーマンスの良さだ。

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