まさに神業!こんな小さな折り鶴を2本の鉗子で2分弱で…腹腔鏡手術の技術向上へのトレーニングが話題

腹腔鏡手術の技術向上のための折り鶴トレーニングがSNS上で大きな注目を集めている。

きっかけになったのは静岡市立静岡病院消化器外科に勤務する医師・橋本洋右さん(@ysk84books)が

「自己ベスト更新しました
まだ短くなりそう」と投稿した動画。

これが腹腔鏡手術の技術向上のためのトレーニング?

2本の鉗子を使い、たった2分弱で折り鶴を折ってしまうこの動画。

あまりの神業ぶりにSNSユーザー達からは

「もうラパロ鶴折界のウサイン・ボルト
影すら踏めない」

「この小さな掴む所が人間の指のように動いてますね…
この日々の鍛錬が正確で細かな手術の実現が可能になるんですね!!
すごいです!!」

「凄すぎて見入ってしまいました☺」など賞賛の声が寄せられている。橋本さんに話を聞いた。

ーー折り鶴のトレーニングを始めたきっかけは?

橋本:腹腔鏡手術に関しては学会が定める技術認定制度というものがあって、所定の手術の動画で審査されます。合格率30%に満たないかなり厳しい審査です。私が審査で落ちた時、審査員のコメントに「左手の鉗子操作が稚拙で全体として雑である」とありました。これを改善するため、手術室の外でも修練を積める方法としてたまたま動画で見た折り鶴を始めてみました。

ーー始めた頃の出来具合は?

橋本:最初は1時間かかってとても鶴とは思えないものが出来上がりました。ただ不可能ではないと思いましたので続けてみることにしました。

ーー今に至るまでどのような紆余曲折があったのでしょうか?

橋本:最初は腹腔鏡手術の練習用の箱の中で扱えるぐらいに折り紙を切って折っていました。その後、100均で7.5x7.5cmの折り紙を見つけて、そのサイズに落ち着きました。

とにかくきれいに折ることを心掛けて、1回30分程度、週3、4回の割合で折ってました。2012年7月から始めて3年半かかって千羽鶴が完成しました。当時は一羽折るのに7、8分かかったと思います。

この千羽鶴ができるまでに3年半の月日が流れた

その後日本医科大学産婦人科(当時)の市川雅男先生らと一緒に、折り鶴を折るタイムを競争する「神の手チャレンジ」というウェブ上の企画をスタート。当時あったホームページ上にランキング表を掲載しました。

最初は誰も6分を切れなかったため「神の手」という称号が6分未満となっていました。その後、誰かが記録更新するたびにそれに追随するものが現れるといった形で皆で切磋琢磨。3分半を切るタイミング以外はすべて私が記録更新し、3分を切った時は誰もがもうこれ以上は無理だろうと思っていましたが、半年ほどして追随するものが現れたのでさらにタイムを追及し、2021年10月に初めて2分切りを達成しました。2分を切れるのは知る限りでは私だけです。

ーー腹腔鏡手術の技術はどのように向上したのでしょうか?

橋本:鶴を折るには土台に鉗子を押し付ける必要があり、これが手術操作と異なるため手術手技の練習になっていないとの否定的な見解もあります。ただ個人的には左右の手の協調性と利き手でない手の鉗子操作は確実に上達すると考えています。折り鶴トレーニングは楽しむことができる人にとっては、苦痛の少ない練習方法だと考えています。同じようなクオリティの鶴が5分程度で連続して折れるようであれば腹腔鏡手術の技術としては十分と考えています。あとは解剖の理解とか手術手順の理解とか実際の手術に必要な知識を得て経験を積むことによって安全に手術が行えるものと考えます。

ーー今後もトレーニングは継続されるのでしょうか?

橋本:自分のレベルでは3分程度あれば同じようなクオリティで何羽も折り続けることができますが、2分を切るとかなり雑になってしまいます。まだまだ修練が必要です。実際の手術でバタバタと手を動かすことはありませんが、自分がどのぐらいの速さまで正確に動かせるかを確認するタイムアタックは今後も定期的にやってみるつもりです。

ーー反響へのご感想を。

橋本:好意的なコメントもいただく一方で、「雑だ」「このクオリティは練習として正しいのか」など厳しい意見もいただきました。同じものを見ても雑だと思う人もいればきれいだと思う人もいる。美しさの基準も人それぞれだと気づかされました(笑)。

このトレーニングはやる人は徐々に増えてきているものの王道の練習ではありません。もっと効率の良い方法はあると思います。ただ楽しんで続けている方も一定数います。腹腔鏡手術の練習と固くとらえられるよりは、手術道具で遊んでいるとみていただく方がこちらとしては気が楽です。
◇◇

現在、橋本さんの最短記録は1分46秒だそう。これからの記録更新を期待したい。

橋本洋右さん関連情報

Xアカウント:https://x.com/ysk84books
Youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/@wespyintheusa
Kaminote Challenge:https://www.facebook.com/groups/1083521681720342/

(よろず〜ニュース特約・近藤リナ)

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