イスラエルがイランを攻撃か、中部イスファハンなどで爆発

イスラエルが19日早朝、イランを攻撃したと、BBCがアメリカで提携するCBSニュースが、アメリカ当局の話として報じた。

米NBCとCNNは、複数の匿名アメリカ政府筋の話として、イスラエルは今回のイランへの攻撃について、事前にアメリカ政府に通知していたと報じた。「(イスラエルによる)その反応を我々は支持しなかった」と、CNNは米政府筋の話として伝えている。

CBSニュースによると、アメリカの政府高官2人が、イスラエルのミサイルがイランを攻撃したことを認めた。

米政府高官2人は、攻撃はイスラエルからだとメディアに語ったが、イスラエルは今のところ自分たちによるものとは認めていない。

しかしその後、イランの宇宙機関関係者がミサイル攻撃はなかったと、ソーシャルメディアで直接否定した。

ホセイン・ダリリアン 氏は、「中部イスファハンやその他の地域に対する国境外からの空からの攻撃はない」と説明。「イスラエルは クアッドコプター(無人機)を飛ばそうという屈辱的な試みで失敗しただけだ。クアッドコプターも撃墜された 」と述べた

また、ロイター通信はイラン高官の話として、「イランはイスラエルに対して直ちに報復する計画はない」と報じた。

この高官は匿名を条件に、「事件に関する国外の情報はまだ確認されていない。我々は外部からの攻撃は受けておらず、攻撃というより侵入の方向に議論が傾いている」と語った。

ロイター通信は、イラン国営テレビの報道内容として、現地時間午前3時ごろに、イスファハンの上空で3機のドローン(無人機)が観測され、同国の防空システムが作動したと伝えている。防空システムがドローンをいずれも破壊したという。

これに先立ち、イランのファルス通信は、イスファハンの国際空港付近で「爆発音」が聞こえたと報じていた。

イスファハン州には、大規模な空軍基地、主要なミサイル製造施設、いくつかの核施設がある。

イラン国営放送IRIBは、「信頼できる情報筋」の話として、イスファハンの核施設は「完全に無事」だと伝えている。

また、イランの最高国家安全保障会議(SSC)の報道部が「緊急会議が開かれたという外国メディアの報道を否定した」と報じた。

国際原子力機関(IAEA)も、イランの核施設に被害がないことを確認した。

IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は

で、核施設は軍事衝突の標的になってはならないと強調し、「すべての人に極度なまでの自制」を促した。

アメリカのマーク・キミット元国務次官補は、BBCニュースの取材で、イスファハンの重要性と、イスラエルがイスファハンを攻撃場所に選んだ理由について次のように語った。

「イスファハンは、訓練、研究、そしてイランの核能力の開発という点で、イランの核開発計画の中心地だ」

「イスラエルが最も恐れているのは、現時点でミサイルが発射され続けることではなく、明日の核開発能力なので、そのためイスファハンを狙った可能性がある」

イランの国営放送IRIBは、攻撃の報道を大きく扱っていない。

IRIBはメッセージアプリ「テレグラム」に、記者の一人がイスファハン市中心部のビルの屋上に立っている動画を投稿。

「街は安全で、人々は普通に生活している」、「数時間前、上空で音が聞こえた。我々が知る限り、複数の小型無人機がイスファハンの上空を飛行中に狙われたようだ」と、記者は報じている。

記者はまた、「これまでのところ、州当局からは何の情報も得られていない。一部の報道は、イスファハンの核施設が狙われたと言っていたが、我々が調べたところ、この情報は誤りで、狙われた場所はない」とも述べている。

国営メディアはまた、イスファハン州の陸軍高官の話として、被害の報告はないと伝えた。

このほか、イスファハン、シラク、テヘランを含むイランの主要都市上空で、民間航空機の飛行が一時停止したと、ロイター通信が伝えた。

また、中東を拠点とする航空会社エミレーツ航空とフライ・ドバイの航空機が早朝、説明もなくイラン西部の上空で迂回(うかい)を始めたという報道もある。

イランの国営通信IRNAはその後、テヘランのイマーム・ホメイニ国際空港で運航が再開されたと報じた。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「(中東)地域の安定が保たれ、双方の当事者すべてがこれ以上の行動について自制することが、絶対的に必要」だと、訪問先のフィンランドで強調した。

エルサレムで取材中のジェイムズ・ランデイルBBC外交担当編集委員は、「イスラエルは今回の攻撃を公式に認めていないが、イラン領内の奥深くを自在に攻撃できるのだという合図を送ったのだろうと、アナリストたちは見ている」と指摘する。

イスラエル国防軍の元報道官、

で、「イランは陰に戻ろうとしており、戦略上の要衝イスファハンへの攻撃を、たいしたことではないと言おうとしている。しかし、『イスラエルはイランの防衛を突破して、どこでも攻撃できるのだ』という、(イスラエルの)合図は受け取ったと思う」と書いた。

一方で、イスラエルの極右政党を率いるイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相は、ソーシャルメディアにヘブライ語で「弱腰」とだけ書いた。

イランの革命防衛隊は今月1日、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館の領事部がイスラエルによって攻撃され、将官7人が死亡したと発表した。

イランは14日、イスラエルに向けてドローンやミサイルを発射。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はその後、イランに報復攻撃を行うと表明しており、中東地域でのエスカレーションが懸念されている。

19日の報道から数時間前、イランのホセイン・アミール=アブドラヒアン外相は米CNNの取材に対して、イスラエルによるいかなる報復に対しても、自国の対応は「即時かつ最大レベル」になると警告していた。

同外相は今週初めにも、14日に行ったイスラエルへの攻撃は、「正当な防衛権の行使」に相当すると述べていた。

<解説>イスラエルの反撃はきわめて限定的の様子――フランク・ガードナー安全保障担当編集委員

イスラエルは先週末、イランによるドローンとミサイルの「大群」攻撃に何らかの形で対応することを明らかにしていたが、どうやらそれが実現したようだ。

これが本当にイスラエルの対応の始まりで終わりだとするなら、その規模と範囲は非常に限定的なものになりそうだ。

今朝のイスファハンは平常に見える。

イスラエルの西側の同盟国、特にアメリカやイギリスは、イランのミサイル攻撃に対して大規模な対応を取らないよう、イスラエル政府に働きかけ続けてきた。

イランによる攻撃は劇的なエスカレーションではあったが、そもそも4月1日にイスラエルがダマスカスのイラン領事館を空爆し、2人の将軍を含む13人を殺害した前代未聞の事態に対する報復だった。

今後の展開は、イスラエルの攻撃がこれで終わるのか、そしてイランが反撃に転じるのか、この2点にかかっている。

イラン国内では反体制勢力が指導部を脅かし続けているだけに、イラン政府はイスラエルとの紛争で、自分たちを勝者と見せる必要がある。

そのため、現地時間14日早朝の大規模なイスラエル攻撃はイラン国内では、「敵に思い知らせる」ためのものだったと吹聴されている。実際にはイスラエルなどの防空システムがミサイルやドローンのほとんどを撃墜したし、死者は出なかったのだが。

いかに面子を守り、自分たちは強いというイメージを守るかが、この紛争の重要な一部だ。しかし同時に、いかに反応を調整し、計算し、抑止力を維持するかも、大事な側面だ。

イスラエルの戦時内閣の中には、もっと大々的にイランを攻撃するよう求める意見も多くあった。しかし、それは危険な戦争拡大につながると、イスラエルの友好各国は口をそろえて警告した。紛争が拡大すればアメリカが引きずり込まれ、エネルギー価格の急騰につながり、大勢が地域から避難しようとする事態に発展すると。

イスラエルは協力国の呼びかけを聞き入れたようだ。それでもイスラエルは、自分たちはイスファハン州にあるイランの核施設のすぐ近くを空爆できるし、次はもっと強力にそこをたたくこともできるのだと、合図を送った。

(英語記事 Israeli missile has struck Iran, US officials say

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