調査に応じた自治体には20億円の交付金…高レベル放射性廃棄物「核のゴミ」めぐる議論始まり揺れる“原発のまち”

原子力発電所がある以上、避けては通れないのが高レベル放射性廃棄物、いわゆる“核のゴミ”の最終処分場問題だ。佐賀・玄海町では「文献調査」の受け入れを求める請願が議会に出され、議論の行方が注目される。

議会に“調査受け入れ”の請願書

玄海原子力発電所がある佐賀・玄海町。その玄海町の議会に4月15日、ある「請願書」が提出された。

それは、高レベル放射性廃棄物、いわゆる“核のごみ”の「最終処分場」選定の第1段階にあたる「文献調査」の受け入れを求める請願書。提出したのは地元・玄海町の、旅館組合、飲食業組合、防災対策協議会の3つの団体。
最終処分場の選定をめぐり、玄海町の議会に文献調査に関する請願が出されたのは初めてだ。

請願書が提出された当日、玄海町の脇山伸太郎町長は「文献調査に関する請願が上がってきているということは重く受け止めている」と心境を語ったあと、次のように話した。

玄海町 脇山伸太郎町長:
これまで私としては、自分から、自ら手を挙げることはないと議会答弁の中ではずっと言ってきました。この数年間ですね。国からの要請があっても受け入れる気持ちはない。ただ、うちは原発立地町であるので、今後、直接「文献調査、最終処分場」ということよりも、そういった理解活動の応援はしていきたい

決まらない“核ごみ”最終処分場

原子力発電で出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場をめぐっては、“場所が決まらない”状況が続いていて問題となっている。

最終処分場の選定については、これまでに北海道の2つの自治体で文献調査が行われているが、それ以外に調査を受け入れている自治体はない。

文献調査の受け入れについては町長に権限がある。
第2段階では、経産大臣が知事と町長に意見をきき「反対」となれば先に進まない。最近の例を挙げると、地元の団体から文献調査を受け入れるよう請願を受けた長崎県の対馬市議会は、賛成の請願を採択したが、その後、市長が受け入れないことを決めている。

国から最大20億円の交付金

文献調査の期間は約2年。調査に応じた自治体には国から最大20億円の交付金が出ることになっている。

高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の第一段階にあたる「文献調査」の受け入れを求める請願書が提出されたことについて、玄海原発がある玄海町の町民からは、最終処分場の建設に一定の理解を示す声も聞かれた。

玄海町の漁業者(79):
原子力がなくなるわけじゃない。もう貯蔵庫自身もいっぱいになっているから、そういうことから考えるとやむを得ないかな

玄海町の飲食業(76):
処分場をつくるのは反対じゃない。必ずいる。今あそこ(貯蔵庫が)満杯だから。どこにも持って行きようもないの。もうこれ以上貯められない。そしたらどこかに(処分場を)つくらないといかんやろ

最終処分場の選定については、文献調査・概要調査・精密調査の3段階の調査がある。
第1段階の「文献調査」は町の判断で行うことができるが、第2段階の「概要調査」以降は県の同意が必要になる。

知事「新たな負担受け入れない」

請願書が玄海町議会に提出された翌日、佐賀県の山口知事の発言が注目された。

臨時県議会を終えた山口知事は、記者の質問に対し次のように述べ、最終処分場の建設に反対する意向を示した。

佐賀県・山口祥義知事:
佐賀県はこのエネルギー政策については相当の役割を果たしていると思うので、かねてから議会などで申し上げている通り、“新たな負担”を受け入れる考えはありません

その上で山口知事は、文献調査については「玄海町で議論されると思うのでそれを見守りたい」と語った。

玄海町議会で議論始まる

請願書の提出を受け、玄海町議会では17日、最終処分場の選定に向けた「文献調査」の受け入れについて議論する特別委員会が始まった。

特別委員会には、参考人として資源エネルギー庁とNUMO(原子力発電環境整備機構)の職員が出席し、「核のごみ」の最終処分などについて説明した。

資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 下堀友数課長:
とにかく全国でどんな自治体であっても、こういったご議論をいただくこと、ご関心を持っていろいろな思いをいただくことは、大変、国としてはありがたいと思っていますので、しっかり必要な情報提供というのは国としてはやっていきたいと思っています

「文献調査」は町長の判断

特別委員会のメンバーは10人の議員全員で、議会が「請願」を採択した場合、最終的に町長が判断することになる。

玄海町・脇山伸太郎町長:
議会の判断・採決が出れば私が判断しなければならないときが来ると思っている。それまでは皆さんの議論を注視するしかないので、まだこうするということは決めていない

高レベル放射性廃棄物、いわゆる“核のごみ”の最終処分場をどうするのかという問題は、原子力発電所で発電したエネルギーを利用している社会である以上、避けては通れない。
一筋縄ではいかない“議論”の行方が注目される。

(サガテレビ)

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