松坂屋名古屋店 屋上遊園46年ぶり刷新 3世代楽しめる空間を存続、25年春開業へ

5月の大型連休明けに休園する屋上遊園(名古屋市中区栄)

 大丸松坂屋百貨店は、松坂屋名古屋店(名古屋市中区栄)の屋上遊園を46年ぶりに大幅刷新する。5月の大型連休明けに休園し、改装工事を開始。2025年春に開業する。大規模改装計画の一環。全国の百貨店で屋上遊園が次々と姿を消す中、親子3世代で楽しめるコミュニティーの場の存続が必要と判断した。併設する庭園も刷新し、地域と共生する体験型の屋上施設へ改装する方針だ。

 名古屋店本館8階の屋上遊園と屋上庭園の合計面積は約2300平方メートル。うち屋上遊園は約1300平方メートルを占める。クレーンゲームや子ども向けの乗り物など、遊具は72点そろえている。親子を中心に平日は平均で20組程度、休日は40組程度が来場している。
 J・フロントリテイリングでは、26年度を最終年度とするグループの新中期経営計画の中で、松坂屋名古屋店や名古屋パルコ(名古屋市中区)で大型改装を実施する計画を表明。松坂屋名古屋店は本館を中心に延べ8フロアを大幅に刷新する方針を示した。屋上庭園は4月末から改装工事に入る予定だ。
 改装後の屋上施設は、遊具を残すほか、現庭園は子どもが遊ぶ広場などを想定。子どもの成長や学び、アートなどをテーマに、百貨店の屋上施設の見せ方を再定義したい考えだ。
 名古屋店の大規模改装計画の議論の中で、屋上施設について検討した結果、地域の顧客から長年支持されてきた思い出の場所を存続させることを判断。地域と持続的に共存していく意味合いも込めた屋上施設に刷新したい考えだ。
 大丸松坂屋百貨店の執行役員松坂屋名古屋店長の齊藤毅氏は「かつての屋上遊園は一つのコミュニティーの場としてご利用いただいていた。今の時代に合うように、新しいコンセプトや(具体的な)形でコミュニティーの場を守っていきたい。数少ない屋上遊園の価値を大切にしていく」と話している。
 松坂屋の屋上遊園の歴史は1910年にまでさかのぼる。同年に名古屋で開業した、松坂屋の前身の「デパートメントストア いとう呉服店」の屋上に、子ども用ブランコが設置されたのが、松坂屋の屋上遊園の始まりとされる。1925年に松坂屋として現店舗開店時に、屋上でこども遊園や動物園などを開設。他社との差別化を図った。1948年ごろは、子ども向けの電気バスが大人気だった。当時の名古屋の市電料金が6円に対し、屋上遊園の電気バスの料金は20円。高嶺の花で、顧客の憧れの存在だったという。

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