柿澤勇人「役としては本当にしんどかった」源実朝を演じた『鎌倉殿の13人』三谷幸喜は「見る角度や視点が違うんだなと思います」

柿澤勇人 撮影/冨田望

劇団四季で俳優活動をスタートさせ、退団後は舞台、映像とジャンルレスに活躍している柿澤勇人。この1月期にもっとも話題を集めたドラマ『不適切にもほどがある!』でも大きな注目を集めた。2022年に源実朝役で出演した大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での好演も記憶に残る。さらに子どものころには、芸事に生きる祖父と曾祖父の姿を間近で見ていたという柿澤さん。そのTHE CHANGEとは――。【第2回/全4回】

『鎌倉殿の13人』の出演

故・蜷川幸雄さんがスタートさせ、吉田鋼太郎さんが引き継いだ「彩の国シェイクスピア・シリーズ」。5月にはシリーズ2nd Vol.1として『ハムレット』が上演される。

タイトルロールのハムレットを演じる柿澤さんは、舞台での評価はもちろんのこと、映像作品へも進出し活躍を続けている。特に2022年に出演した、小栗旬さん主演の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での源実朝役は、いまだ新鮮な記憶として残っている。

――『鎌倉殿の13人』は『平清盛』『軍師官兵衛』に続く、3作目の大河ドラマ出演でしたが、源実朝役は、かなり反響があったのでは?

「違いましたね。いままで街で歩いていて声をかけられることなんて、ほぼなかったんです。でも『鎌倉殿の13人』が放送されていた時期は、“鎌倉殿、見てます!”とよく声をかけられました。本当に嬉しかったですね(笑)」

――『鎌倉殿の13人』への出演から、役者として影響を受けたり、変化したことはありますか?

「変化ではないですが、とにかくすごく楽しい現場でした。役としては本当にしんどかったんですけど、現場の雰囲気も良かったし、スタッフさんもお芝居に集中しやすい環境を作ってくれて、皆さんととても仲良くなりましたね。

キャストも、映像をやっている方だけじゃなくて、舞台の人、その中でも小劇場やミュージカルなどいろんな畑の人たちがいて、そうした人たちが集まって、リハーサルを経てだんだん形になっていくのがすごく楽しかったです」

三谷幸喜がより自身の引き出しを広げてくれた

――脚本を書いた三谷幸喜さんとは、舞台『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』や、今年も『オデッサ』でタッグを組んでいます。

「『鎌倉殿の13人』の場合は、演じた役が実在した人物なので、いろんな資料や伝わっていることなどから三谷さんも脚本を書かれていったと思うのですが、そのなかでも僕がハマるところに当て書いてくれたのかなと思います。普段、僕はエキセントリックな役が多いんです。犯人役とか、叫んでいるような役を求められることが多い(笑)。

それを三谷さんは『鎌倉殿の13人』で、人生で、一回も絶叫したことがないような悩める青年、実朝を僕にくれた。和田義盛(横田栄司)が目の前で殺されても、叫ぶけれど絶叫ではなかった」

――あのくだりは残酷でした。

「今まで僕が求められてきたものじゃないものを、三谷さんはやらせてくれる。そこは不思議ですね」

――ご自身の中には実朝のような部分がもともとあるのでしょうか。

「もちろんありますし、どちらかというと、ふだんの自分はエキセントリックより、おとなしい実朝側かもしれません。そこを三谷さんはよく見て下さっているなと思うし、一方でシャーロック・ホームズはまた全然違う役でしたね。三谷さんは、見る角度や視点が違うんだなと思います」

柿澤勇人 撮影/冨田望

違った視点からというのも、柿澤さんが刺激してくれるからこそだろう。

一方、『ハムレット』は400年以上も前(1601年ごろ)に書かれたシェイクスピアによる戯曲だが、“かっきー”だからこその「デンマークの王子ハムレットの悲劇(原題直訳)」に期待がかかる。

柿澤勇人(かきざわ・はやと)
1987年10月12日生まれ。神奈川県出身。
2007年に劇団四季『ジーザス・クライスト=スーパースター』でデビュー。
劇団四季退団後は、映像作品にも活躍の場を広げる。主な出演作に舞台『海辺のカフカ』『デスノート THE MUSICAL』『メリー・ポピンズ』『ジキル&ハイド』『スクールオブロック』『オデッサ』、映画『鳩の撃退法』、ドラマ『真犯人フラグ』『不適切にもほどがある!』など。2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で源実朝を好演したのも記憶に新しい。第31回読売演劇大賞にて優秀男優賞を受賞。5月に上演される彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』でタイトルロールのハムレットを演じる。

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