【震災13年 若い世代の楽団】応援の輪を広げたい(4月20日)

 東日本大震災をきっかけに本県などの若者で結成された東北ユースオーケストラと福島青年管弦楽団は、それぞれ2014(平成26)年の発足から10年を迎えた。恩人の死、突然の台湾大地震といった困難に直面しながらも、今春の演奏会を懸命に心を束ねて成功させた。両団体とも今後の活動継続には課題もある。心の復興を具現化する存在として応援の輪を県内外に広げていきたい。

 東北ユースオーケストラは世界的音楽家の坂本龍一さんが福島、宮城、岩手各県の若者とともに立ち上げた。今年3月に盛岡、仙台、郡山各市と東京で開いた定期演奏会は、坂本さんの一周忌の追悼公演となった。卒団者を含む出演者約90人は、常に「自信を持って」と励ました坂本さんのように優しく、力強い音色を響かせた。

 本県在住・出身者でつくる福島青年管弦楽団は5年ぶりの海外演奏会として台湾公演を企画した。本番前日の今月3日、現地で大地震に遭遇したものの、団員約40人は集中力を維持して練習を続けた。当日は台北の管弦楽団と予定通り共演し、聴衆に希望を届けた。

 両団体とも被災地の若者を音楽で元気づけ、成長する姿と磨き上げた演奏を広く発信する目的でつくられた経緯がある。近年は新型コロナ禍で思うように活動できないもどかしさも味わった。今春の公演成功は、多様な経験を経て若い力が着実に育まれた証しであり、結成時に目指した姿が実現したと言えるだろう。

 東北ユースオーケストラは各会場で能登半島地震の義援金を募り、被災地に寄せた。福島青年管弦楽団は公演の収益を台湾の貧困世帯支援に充てる。関係者によると、能登や台湾の地震を受け、団員から「支える側になりたい」との声が相次いでいるという。頼もしい限りだ。

 成果が目に見え始めた一方で、活動を支える寄付が年月の経過とともに減少するなど、共通の課題を抱えている。いずれもホームページや交流サイト(SNS)などで取り組みを詳細に伝え、協力を呼びかけている。若い世代が紡ぎ出す文化は、郷土に活力をもたらす。未来へ歩みを進める上で幅広い支援は欠かせず、県民の関心を高めていく必要がある。(渡部育夫)

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