鳥インフル対策奏功 茨城県内養鶏場 今季1例 「予断許さず」

高病原性鳥インフルエンザが発生した養鶏場で防疫作業の準備に当たる関係者=2023年11月、笠間市内(県提供)

飼育鶏などに大量死をもたらす高病原性鳥インフルエンザは今季、茨城県内では笠間市の養鶏場で発生した1例のみにとどまっている。昨季は県内で約430万羽が殺処分対象となったが今季は7万羽余りで、専門家は「生産者の対策が奏功したのでは」と指摘。関係者は冬鳥が去るゴールデンウイーク(GW)明けまで警戒を続ける構えだ。

同県内では昨季(2022年10月~23年4月)、坂東や八千代など5市町の採卵養鶏場など計6カ所で鳥インフルが確認され、計約430万羽が殺処分された。全国では約1771万羽に上り、県内分が全体の約24%を占めた。

冬鳥が再び飛来するようになった23年11月末には笠間市の養鶏場で今季初の鳥インフルが発生。約7万2000羽が殺処分対象となったが、以降の発生は確認されていない。農林水産省によると、全国の殺処分対象も約79万羽(4月10日現在)と大幅に減少した。

今季の鳥インフル発生が少ない理由について、死んだ野鳥のウイルスなどを検査する国立環境研究所(同県つくば市)の大沼学さん(57)は「生産者の防疫意識が高く、対策が進んでいるのではないか」と分析。ただ、冬鳥がシベリアなど北方へ飛び去るのはGW明けまで続くとして「予断を許さない状況」と引き続き警戒を呼びかける。

鳥インフルの感染拡大を防ぐため、関係機関は予防措置の重要性を繰り返し訴えてきた。

鶏卵産地の一つ、JAやさと(同県石岡市)の渡辺泰之さん(39)は「一度発生すれば影響は大きい」と語る。養鶏農家に対し、防鳥ネットや養鶏場への人の出入り制限などについて事あるごとに注意を促しているという。

今後の影響を最小限に食い止める対策として注目されるのは、農場内を複数の区域に分けて衛生管理する「分割管理」。農水省が23年9月にマニュアルを作成しており、鳥インフル発生時の殺処分数を減らすのが主な狙いだ。

だが、分割管理では鶏卵の洗浄や殺菌を行うGPセンターを別々に整備する必要があったり、作業員を増やしたりする必要があり、大規模農場ではスケールメリットを生かせなくなる側面も。県は分割管理を後押しする施策を打ち出しているが、県畜産課によると、県内の導入例はないという。

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