『涙の女王』キム・ジウォンの“本心”に号泣必至 互いの愛を確認し合ったヘインとヒョヌ

Netflixで配信中の『涙の女王』が視聴者を熱狂させている。tvNドラマ公式X(旧Twitter)によると、歴代tvNドラマの韓国での視聴率(首都圏・世帯基準)が、3位『トッケビ』(21.5%)、2位『愛の不時着』(22.6%)を抜き、『涙の女王』(23.07%)が堂々1位の座についた。人々を夢中にさせる本作の魅力を第11話、第12話を中心にご紹介したい。

「財閥、血族争い、乗っ取り、病気、復讐」というモチーフは、これまで数々の韓国ドラマで使われてきたいわば、“使い古された王道”路線だ。だが、『涙の女王』は、その“王道”を華麗に魅せ、私たちの心をガッツリと掴むことに成功している。観るものの目を惹きつける仕掛けとしての豪邸に豪華な調度品、華麗で煌びやかで上質な衣装やアクセサリーに高級車。さらに最新の演出技法に、驚くようなディティールまで表現された脚本、それらを見事な演技力で演じる俳優陣。中でも主演を演じるキム・スヒョンとキム・ジウォンの目の演技は卓越している。

物語は、キム・ジウォン演じる、クイーンズグループの財閥3世で、“デパート業界の女王”と呼ばれるホン・ヘインと、キム・スヒョン演じる、田舎の“スーパーマーケットの王子”ペク・ヒョヌ夫婦の真の愛を描いたロマンティックコメディだ。格差婚から3年が経ち、すれ違いから離婚したヒョヌとヘインだが、発覚したヘインの病気をきっかけにまだ互いを愛し合っていることに気づき、互いに真の愛に目覚めていく中で、クイーンズグループの乗っ取り問題が絡んでいく。(以下、ネタバレあり)

第11話、第12話は、ヘインが記者会見で余命僅かなことを発表したところから始まる。ヘインの会見を見た龍頭里(ヨンドゥンリ)村では、大騒ぎとなり、ペク家とホン家の家族たちは涙にくれる。ヘインの母ソンファ(ナ・ヨンヒ)が、これまでヘインが抱えてきたつらさと、おのれの娘への残酷な仕打ちに気づき、慟哭する姿が胸を打つ。ソンファは、長男の死後、ヘインに辛く当たってきたが、ソンファとヘインは似たもの親子で、気位の高さや、胸の中に秘めている想いとは裏腹なきつい言葉や態度を表に出す所はそっくりだ。そんな母娘が、ヘインが余命僅かだということをきっかけに和解する。

ヘインは、会見後に意識を失くして病院に運ばれる。そこに駆けつける家族たち。意識のないヘインを見て涙するヒョヌやかけつけた家族たちの涙に、観ているこちら側も泣いてしまう。ヘインは意識を失くす瞬間、ヒョヌの胸に倒れながら、「ダメよ、まだ言えてない」と思う。そして、ドイツでヒョヌに冷たく当たったことを脳裏に思い浮かべながら、「大丈夫。あなたを憎んだことは一度もない。心と裏腹なことを言う私のそばに長い間一緒にいてくれてありがとう。愛してる。おかげで生きたくなった」と心の中で語るシーンは号泣必須。ヘインの冷酷な言葉に苦悶の表情を浮かべ涙するヒョヌが、ヘインの心に刻まれていたことがわかり、冒頭から号泣した視聴者も多いだろう。

運ばれていくヘインを見て涙し、このままもしかして逝ってしまったらどうしようという恐ろしさに身体を小刻みに震わせるキム・スヒョンの演技は、ヒョヌという人物と同化し、感情を引きつけ没入させる。

その後、スチョル(クァク・ドンヨン)が、ヘインを呪っていた呪符を取り出し、そのせいでヘインが病気になったというのだが、それを耳にしたヘインが「呪符がどうしたって?」と目覚めるのが面白い。倒れたヘインとヒョヌや家族に泣かされたあと、ヘインの目覚めに笑いを持ってくるという抜群のセンス力に脱帽する。

本作が観るものの心をガッツリと掴んで離さないのは、涙、笑い、怒り、興奮、快感といった観る者の感情を多彩に刺激し、1時間半ほどの時間を楽しませてくれる極上のエンターテインメント作品であるが故だ。ヘインの病と夫婦の愛、財閥乗っ取りに復讐と、一瞬たりとも飽きさせない。

一方、クイーンズグループを乗っ取ったユン・ウンソン(パク・ソンフン)と、母モ・スリ(イ・ミスク)は、クイーンズグループ会長のホン・マンデ(キム・ガプス)が隠している巨額の裏金を探していた。スリは、意識を取り戻し自宅に戻ったマンデを脅し、裏金のありかをはかせようとする。マンデの裏金が、自宅に隠されていることに気づいたヒョヌとヘイン一家は、ウンソンたちよりも先に裏金を手にするべく、自宅の設計図を手に入れる。

意識の戻ったヘインは、ヒョヌに「愛してる。初めて出会った時からずっと好きだった」「このまま死んだら気持ちが伝えられない、生きてるうちに言っておくの」と告げる。このシーンで、ヘインの告白を聞くキム・スヒョンの繊細な目の演技力に圧倒され、瞬きをするのも忘れるほど彼の視線に釘づけになった。

ヘインの愛の告白を聞いたヒョヌは、「ゆうべ僕は一生分以上のお祈りをした。妻が死んだら僕は何もできない、毎日泣いて潰れるまで酒を飲み、道端で寝るような自堕落な生活を送るって」と言う。離婚したふたりだが、ヒョヌにとって神様を脅すほど、ヘインは大切で愛する妻なのだ。互いへの本心を明かし合い、愛を確認し合ったふたり。「死なせない」というヒョヌの言葉の通り、奇跡が起きることを強く願っている。

しかし、ヘインの病状は悪化の一途を辿り、ウンソンをヒョヌと見間違えたり、ヒョヌをウンソンと見間違えるようになる。ここでのキム・スヒョンとパク・ソンフンの入れ替わりの演技がすこぶるいい。ウンソンだがヘインにはヒョヌに見えている顔と、ヒョヌだがヘインにはウンソンに見えている顔を演じる両者の演技力には舌を巻く。ウンソン風ヒョヌと、ヒョヌ風ウンソンという、雰囲気の違いを醸し出す卓越した演技力に魅せられる。

ヘインは、マンデに会いに行き、それによってマンデに変化が現れる。また、クイーンズ転覆の一派として暗躍したスチョルの妻ダヘ(イ・ジュビン)が、スチョルの元に戻ってくる。家族たちの前でダヘを庇う毅然としたスチョルの姿に、よかったねと肩を叩いてやりたくなる。純情なスチョルは、ダヘ曰く「バカ」だが、愛すべきおバカキャラを演じるとクァク・ドンヨンの右に出るものはいないのではないだろうか。スチョル夫婦の愛も、偽物から始まり、真の愛が育っていたことに気づいたダヘは、ここから幸せになるに違いない。

ウンソンがヘインを愛していることで揉めることが多くなったスリとウンソン母子だが、スリは、ウンソンを苦しめるものをこれまでも容赦なく叩き潰してきたことも明かされた。スリの恐るべき復讐心の発端は一体何なのだろうか。自分の息子を施設に入れてまで、長い年月をかけて復讐する動機は、触れられないスリの夫、ウンソンの父に関係するのかもしれない。

『涙の女王』は、画面の中だけでなく、視聴者にも滝のような涙を流させ、観るものを“涙の女王”にする名作だ。残すところ4話となったが、次の日に目が腫れあがるほど泣く準備も、嬉し涙の準備もできている。
(文=リアルサウンド編集部)

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