【第3回WUBS】高麗大学校(韓国)は日韓大学王者対決の借りを返せるか

昨夏の第2回WUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=世界大学バスケットボール選手権)に韓国の大学王者として初めて出場した高麗大学校は、初戦でラドフォード大(アメリカ)に63-100と敗れた後、東海大との日韓王者対決となった5-8位決定戦も50-59で落とし、7-8位決定戦でシドニー大から84-69で初勝利を挙げて1勝2敗の7位という成績で帰国した。この結果は不本意だったに違いない。

しかし高麗大は、その後韓国の大学リーグであるUリーグ2023では前年に続く連覇を達成。9月に行われたUリーグ2023プレーオフで再び韓国の王者として第3回WUBSへの出場権を得た。また、新チームは3月19日に開幕したUリーグ2024を戦っている最中だが、3月中の2位試合は漢陽大学校との初戦が81-51、明知大学校との第2戦が96-55の勝利。昨シーズンの勢いはまったく変わっていない。はたしてどのようなチームなのだろうか。第2回WUBSとUリーグ2023を振り返りながら、特徴を紹介してみたい。

2023年のU19韓国代表が4人在籍する韓国大学界の王者まずはUリーグ2023だが、レギュラーシーズンは13勝1敗で、祥明大学校との最終戦に67-68で敗れるまで開幕から全試合を2桁点差で制していた。平均得点84.6でも2位以下を9.1点以上引き離すなど、群を抜く強さであり、レギュラーシーズンの上位8チームで王座を競うプレーオフではクォーターファイナルで慶熙大学校を90-73、セミファイナルで檀国大学校を79-64で下してファイナルに進出すると、最後は延世大とのライバル対決60-57で制して連覇を達成してた。

第2回WUBSでは、主力の上級生ムン ジョンヒュン(F/194cm)とシン ジュヨン(C/201cm)が出場していなかったことでUリーグとは異なる戦い方だったのは間違いないだろう。両者は、ラドフォード大との一戦で13得点を挙げたパク ムービン(G/184cm)とともに、帰国後KBLドラフト1巡目で指名を受けて現在はプロで活躍しているタレントだ(一方でラドフォード大は完全にオフシーズンの来日しており、東海大もキャプテン黒川虎徹がワールドユニバーシティゲームスからの帰国直後など、それぞれに異なる事情を抱えていたので、これを成績に対する言い訳と考えるべきではないだろう)。

ムン、シン、パクが抜けた高麗大は、高確率の3Pショットが魅力のキム テフン(G/190cm)がキャプテンを務め、パク ジュンヒョン(F/190cm)が副キャプテン。17人のメンバーには昨年WUBS経験者も多く残っており、そのうちの一人であるムン ヨヒョン(G/180cm)と新メンバー3人がFIBA U19ワールドカップ2023に出場した韓国代表という強力な顔ぶれだ。ちなみにキム テフンもFIBA U19ワールドカップ2021で韓国代表として活躍した経歴を持っている。

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昨年の大会で最も安定感のあるパフォーマンスを披露していたのは、新キャプテンのキム テフンだった。平均8.7得点、3P成功率40.0%という数字は驚くべきとまではいわないが、3試合を通じてコートに立つ時間も長く並の少ないプレーが光った。逆に、出場機会が試合によって変動したものの“大活躍”と呼べる活躍で爪痕を残したのはムン ヨヒョン(東海大戦で18得点、3リバウンド、2アシストに1スティール)とキム ドエン(G/183cm=最終日のシドニー大戦で20得点、8リバウンド、4アシスト、1スティール、1ブロック)だった。ムン ヨヒョンはFIBA U19ワールドカップ2023でも大会全体の13位となる平均14.1得点に4.9アシストを記録したガードで、今後の韓国男子バスケットボール界を展望する上でも注目株と言えるプレーヤーだ。

FIBA U19ワールドカップ2023で韓国代表の大黒柱として活躍したムン ヨヒョン。第2回WUBSでの東海大との日韓大学王者対決でも、敗れたとはいえゲームハイの18得点で気を吐いていた(写真/©月刊バスケットボール)

第2回WUBS最終日のシドニー大戦で20得点を記録したキム ドエン。高麗大唯一の勝利に大きく貢献した(写真/©月刊バスケットボール)

サイズ的にはヨー ミンス(F/202cm)、ヤン ジューン(C/200cm)、そして新顔でU19韓国代表のリー ドヨン(C/200cm)と200cm越えのタレントが3人。また、シューター陣では身長193cmのキム ジョンヒュン ダニエルや、高校時代に韓国同世代では最高のシューターと呼ばれるほど注目を浴びた身長190cmのシム ジョーイォンという楽しみなタレントも名を連ねている。戦力のバランスが良く、現に進行中のUリーグでも結果を出しているだけに、第3回WUBSで来日する高麗大は昨年以上に脅威を感じさせるチームだ。

身長200cmのヤン ジューン。今年の高麗大には、ヤンを含め200cm越えのビッグマンが3人在籍している(写真/©月刊バスケットボール)

今夏の大会で、高麗大と白鷗大の日韓王者対決が実現するかどうかはまだわからない。しかしそんな機会があるとすれば、何回戦であれ、最終登録メンバーがどんな顔ぶれであれ、高麗大は2年連続で悔しい思いをしたくはないだろう。昨年の7位から一つでも高く順位を上げるための奮闘はもちろん、そんなドラマにも注目してみると、第3回WUBSがいっそう見応えのある大会として楽しめる違いない。

☆韓国のバスケットボール

韓国のバスケットボールは日本にとって長年のライバルであり、同時に親密な友好関係をはぐくんできた“球友”だ。男子のプロリーグKBLは1990年代半ばからの歴史があるが、近年はBリーグとの交流や、両国トップリーグを代表するクラブが東アジアスーパーリーグに参戦していることなどから、日本でもそれまで以上に多くのファンが注目する状況となっている。

代表チームは昨夏のワールドカップに向けた予選段階で失格となり、現在FIBAランキング50位とやや低迷期。ただし男子日本代表は、ワールドカップ本番前に行った韓国遠征で黒星を喫している。どんな状況化であっても両国の対抗心は旺盛で、毎度どちらが勝つかわからない緊迫感に包まれる。

大学バスケットボールは韓国大学バスケットボール連盟が運営するUリーグを土台に強化・普及を進めている。現在の加盟大学は1部に12チーム、2部に7チームの計19チーム。歴史的にはここで紹介している高麗大と、そのライバルである延世大が伝統的二大強豪と呼ぶべき輝かしい歴史を持っている。

U19日本代表が史上初のベスト8入りを達成したFIBA U19ワールドカップ2023で、韓国は16チーム中12位。(写真は高麗大からU19韓国代表に選ばれワールドカップ2023に出場したユー キチャン/©FIBA.WC2023)

特に日本の大学バスケットボール界との交流に言及する上では、李 相佰(イ・サンベク)という人物に触れないわけにはいかない。日本では「リソウハク」という呼び方で広く知られているこの人物は、1920年代に早稲田大に留学してバスケットボール部で活躍し、後年まで両国における競技の普及と発展に大きく寄与した。毎年両国の大学生同士が対戦する「李相佰盃日・韓大学代表バスケットボール競技大会」は、もちろんかの偉人の功績を称える大会だ。2024年の李相佰盃は日本での開催となり、2024年5月17日(金)〜19日(日)の3日間、国立代々木競技場 第二体育館で開催される。WUBSにも参加する高麗大の選手も韓国代表としてプレーすることになりそうだ。

☆高麗大学校とは

韓国の首都ソウルにある高麗大学校は、韓国で五指に入る名門総合大学だ。学力的にトップレベルであるだけではなく、多くの授業が英語で行われており、国際性を大きな特徴の一つとしている。

特に直近2年間(2022~23年)はUリーグ連覇を達成しており、韓国の大学界最強の地位を揺るがぬものにしている。

こちらは高麗大のジョー ヒジュンHC。KBLで20年にわたり活躍し、リーグMVPにも輝いたレジェンドだ(写真/©月刊バスケットボール)


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