トヨタ、GR製品として座金付きボルトの市販化を検討 モリゾウ選手曰く「GR特製NSボルト(仮称)」

by 編集部:谷川 潔

GR特製NSボルト(仮称)を指差すモリゾウ選手こと豊田章男会長

GR特製NSボルト(仮称)

4月20日~21日の2日間にわたって開催されているスーパー耐久開幕戦SUGO。このST-Qクラスには開発車両がエントリーしており、その1台に32号車 GR Yaris DAT concept(MORIZO、佐々木雅弘、石浦宏明、小倉康宏)がある。

このGRヤリスは、先頃発売となった進化型GRヤリスをベースとしたもので、ボディ形状は進化型GRヤリスのものになり、トランスミッションも進化型GRヤリスから採用された新開発の8速AT「GR-DAT」を搭載している。

2024年シーズンから投入された進化型GRヤリスのスーパー耐久仕様

いわばATをレーシングシーンに投入するわけだが、そのほかの注目ポイントとして挙げられるのが、ボディを止めている座金付きボルト。一般にレーシング仕様とした場合、スリックタイヤ装着のためなどにオーバーフェンダーを装着。かつては板金などでたたき出した金属のものが用いられていたが、現在はFRPやCFRPなど、各種繊維をプラスチックなど高分子物質で含浸したものが使われている。

ボディは金属のため溶接といった接続方法が使えず、クリップやタッピングねじ、ボルト&ナットで機械的に接続してボディ形状を整えている。ただ単純なクリップやねじなどでは、接触などクラッシュしたときに強度の問題で外れてしまい、フロントフェンダー部やリアフェンダー部がはがれ、風にあおられてバタバタしてしまったり、最悪はがれて飛び散りレース進行を危険な状態にしてしまう。

そのため、ボルト&ナットあたりが適切な回答となるのだが、通常のボルトの場合であると接触面積が小さく、強く締め上げると単位面積あたりの圧力が高くなりCFRPなどのフェンダーに亀裂が入ってしまうことになる。そのためワッシャーなどをかまして接触面積を拡大し、単位面積あたりの圧力を下げることになるのだが、どんどん無骨になってしまう。それはそれでレーシングマシン的にはよいのだが、突起物となりすぎてしまうこともあり、悩ましい部分だろう。

GR特製NSボルト(仮称)。レーザーマーキングのGRロゴと、トルクスのボルトを見ることができる

そこで、TOYOTA GAZOO Racingでは特製座金の付いたボルト&ナットを開発。ボルトはトルクスとなっているほか、アルミ座金には「GR」のロゴも入っている。GRヤリスの開発を担当する齋藤尚彦主査によると、「これまで何度もフェンダーなどがはがれてきた。それで、新たに特製ボルトを開発することにした」とのこと。今シーズンのレーシングGRヤリスから導入が行なわれており、実際に装着しての走行も実施しているほか、すでに効果もあった(つまり、なんらかのイベントが起きたということか?)という。

最終的には市販化を予定しており、座金にレーザーマーキングされたGRロゴの調整などを行なっていくとのことだ。

商品名について聞いたところ、齋藤主査は「まだ検討中」と答えていたものの、近くにいたモリゾウ選手(豊田章男会長)に聞くと、「GR特製NSボルト(仮称)、ガハハ」と笑って立ち去っていった。そのため、本記事では「GR特製NSボルト(仮称)」と、以下記しておく。

このGR特製NSボルト(仮称)は、座金の角度も美しく、GRのレーザーマーキングも鮮やか。齋藤主査によると、空力的に考慮すべきところはあるが、「強度的にはバッチリ」とのことで、機能部品としての要件は完成の域に達しているようだ。

ぱっと見たところボルトの直径もそれほど太くないようなので、ボディ部品だけでなくDIY向けなど汎用性もありそうだ。市販製品としての登場を期待したい。

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