低所得者への年金生活者支援給付金、2024年度は給付額が上がる?

物価を基準にしてプラスに

年金生活者支援給付金のうち、老齢基礎年金受給者(65歳以上)に支給される老齢年金生活者支援給付金は、図表1の計算式で計算されます。

老齢基礎年金は保険料納付済期間や保険料免除期間の月数で計算されますが、老齢年金生活者支援給付金は、保険料納付済期間に係る部分については(1)、保険料免除期間に係る部分は(2)を用い、(1)と(2)の合計でその額を算出します。

老齢基礎年金が保険料納付済期間のみで計算されている場合、老齢年金生活者支援給付金の計算上も(1)のみとなり、当該期間が480月ある場合は給付月額が支給額となります。

その給付月額は2023年度については月額5140円でしたが、2024年度は月額5310円になります。つまり、2024年度に老齢基礎年金が満額で支給される人は、月額5310円で給付金が支給されます。

筆者作成

この給付月額は毎年度、物価変動率を基準に改定がされることになっています。物価変動率は、前年の全国消費者物価指数の変動率を指しています。2019年度に始まった年金生活者支援給付金ですが、当時の給付月額は5000円でした。毎年度5000円に物価変動率の累積率により改定された額(10円未満四捨五入)で算出されます。

2024年度は物価変動率+3.2%になったため、5140円から5310円へと大幅に増えていますが、2019年度の5000円からの累積で見ると+6.1で、5000円×1.061=5310円(10円未満四捨五入)になる計算です。

免除期間があると年齢によって給付額が変わる

図表1の(2)のとおり、保険料免除期間が含まれている場合は老齢基礎年金の満額と保険料免除期間の月数を用いて計算します。(2)の老齢基礎年金の満額について、2024年度は68歳以下の人が81万6000円、69歳以上が81万3700円です。

年金額改定のルールにより、2024年度の老齢基礎年金の満額は68歳以下と69歳以上で異なりますが、その結果、(2)で計算された実際の給付金額も68歳以下と69歳以上で変わります。老齢年金生活者支援給付金は、図表1の所得要件を満たせば支給されます。

老齢年金生活者支援給付金の所得基準額(図表1)を超えても、それが10万円以内であれば支給される補足的老齢年金生活者支援給付金についても、当該給付月額が5140円から5310円に変わりますので、対象となる場合は確認しておきましょう(図表2)。

筆者作成

障害・遺族の給付金も上がる

老齢年金生活者支援給付金だけでなく、障害基礎年金受給者を対象とした障害年金生活者支援給付金、遺族基礎年金受給者を対象とした遺族年金生活者支援給付金についても給付月額を基準にその支給額が決まり、2024年度は給付月額が上がります。

障害年金生活者支援給付金は、障害等級2級の障害基礎年金を受給する場合であれば、給付月額が5140円から5310円に上がり、年金の加入記録にかかわらず、当該給付月額で支給されます。障害等級1級の障害基礎年金を受給する場合はその1.25倍の額が支給されることになるため、月額6425円から月額6638円へ上がります。

また、遺族年金生活者支援給付金の支給額も、月額5140円から月額5310円に上がります。なお、いずれも本人の前年(1~9月分の給付金については前々年)の所得が、「472万1000円+扶養親族の数×38万円」以下であることが支給条件です。

以上のように、年金だけでなく、年金生活者支援給付金の額も上がります。それぞれの給付金の所得要件を満たせば対象となりますので、対象となる人はその額が増えることも確認しておきましょう。

出典

厚生労働省 年金生活者支援給付金制度について
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
日本年金機構 障害年金生活者支援給付金の概要
日本年金機構 遺族年金生活者支援給付金の概要

執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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