【4月22日付編集日記】よい夫婦の日

 巨匠ルノワールの妻は「人の好(よ)さをそっくりそのまま具(そな)えた可愛(かわい)らしい婦人」だと画商は評した。18歳下の妻は職人かたぎの夫を相手に、絵のモデルになったり家事育児に奔走したり、飲食もスポーツも楽しみ、おおらかに家庭を守った

 ▼友人モネは2度結婚している。最初の若き妻は多くの作品のモデルになったが、貧困生活の果てに大病を患い他界。後妻は夫をがっちり支えたがモデルを雇うことは認めず、おのずと風景画が増える一因になった

 ▼ノンフィクション作家の沢地久枝さんが「画家の妻たち」(文藝春秋)に書いている。夫の苦しみ抜いた挑戦の後、名画が世に出た背景に妻たちの奮闘があったと思うと、絵もまた違った輝きを放つのではないか

 ▼日本なら明治の頃。パリで著名な女性画家はベルト・モリゾやメアリー・カサットにとどまり、画壇は男性にほぼ占められた。芸術の世界で女性が躍動するには、社会変革へ先人たちの長き闘いを経ることになる

 ▼夫婦の役割を固定化しない現代。結婚を選択肢から外す生き方も増えた。互いに幸福感を得る人生を描きたいなら、自分本位の筆遣いをやめ、絵の具選びから会話を尽くしてこそ近道だ。「よい夫婦の日」に思う。

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