毎日毎日「機能性表示食品」広告を出しておいて…言いがかり新聞報道に唖然!紅麹はアベが悪いのか小林製薬が悪いのか

小林製薬の紅麹を巡り、機能性表示食品の批判が高まっているが、猛烈に批判している新聞はこれまで平然と、毎日のように健康食品の広告を掲載してきた。当然、そのことに対する自己検証などしていない。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が問題点を語るーー。

あれだけ健康食品の広告を掲載していた新聞の手のひら返し

よくもまあ、あれだけ健康食品の広告を掲載しながら、突然、合理的な根拠もなく健康食品を悪者にできるよなーー。

最近の新聞報道への、筆者の率直な感想である。

小林製薬の「紅麹(べにこうじ)」の成分を含むサプリメントを摂取した人が、腎臓の病気などを発症し、大きな問題になっている。4月14日の時点で、延べ213人が入院したことが小林製薬の報告で明らかになっている。これまでに5人が死亡した。

また、この問題に関連して、消費者庁は、約6800の機能性表示食品のおよそ1700の事業者に対して、医療従事者から寄せられた健康被害情報がないかや、情報の収集や国への報告の体制を尋ねる総点検を行なった。

マスコミによる機能性表示食品やサプリメントのあら探し

<回答は(4月)12日が締め切りで、消費者庁は12日午前0時の時点で回答のあった5551製品についての集計結果を発表しました。/それによりますと、集計時点で回答がない、小林製薬の製品を含まない18の製品について、117件の健康被害の情報が医療従事者から事業者に寄せられていたということです。/死亡した事例はなく、下痢や湿しんなどの軽症が多かったと言うことですが、入院を必要とする重篤な症状の例も複数あったということです>(NHKニュースオンライン、4月12日)

この問題に関して、マスコミ各社は、機能性表示食品やサプリメントのあら探しをし回っている。筆者にはテレビを見る習慣がないのだが、テレビの情報番組は、新聞報道や雑誌報道をベースに行うケースが散見されるので、同様の空気づくりが行われているのだろうと推測している。

あらゆる場面で、サプリメントをディスり、機能性表示食品についての印象操作が行われているので、何から述べたらいいか、何を論じたらいいのか迷ってしまうが、まずは、サプリメントと機能性表示食品にもいいところがあることについて簡単に述べたい。

医師「サプリで、病状が改善されるケースがある」

まず、医師によると、サプリメントで、病状が改善されるケースがあるという。

最近、筆者は、化学物質過敏症についての記事を書いたが、ビタミンDが不足していることで化学物質過敏症を引き起こしているケースがあるということだ。

<(化学物質過敏症の)治療には、全身の病気の検査が必要であり、特に頻度が高いのは神経障害性疼痛とビタミンD欠乏症と精神科疾患です>(舩越典子医師、月刊誌WiLL。2024年5月号)という。

生活の質を著しく落としてしまう化学物質過敏症が、ビタミンDを飲んで症状が改善するなら、非常にありがたい話である。

トクホは、許可が下りるまでに4年、そして、費用も数億円

機能性表示食品はどうだろうか。先ほど紹介した消費者庁の調査も、届出制である機能性表示食品だからこそ、実現した調査である。機能性表示食品制度ができる前は、「特定保健用食品」(いらゆる「トクホ」)と呼ばれる制度しかなかった。

トクホは、許可が下りるまでに4年、そして、費用も数億円もかかるという企業にとって非常に使い勝手の悪い制度だった。数億円の費用も足枷だが、致命的なのは、4年という審査期間だろう。企業が新商品を出すのに、4年もかかっていたら、新しいトレンドとまったく無縁の商品をつくらないといけなくなる。

しかし、届出制度になり、機能性の科学的根拠がシステマティックレビューによって行われるため、コストも数百万円、時間も大幅に短縮することになった。だからといって、消費者庁のチェックが甘いということもない。

何としてでも「アベノセイダー」にしたい人

<機能性表示食品のデータベースによりますと、機能性表示食品にはこれまで累計でおよそ8200件の届け出がありますが、このうちおよそ2割にあたる1500件あまりが撤回されています。/届け出の撤回についてガイドラインでは、商品の販売を終了した時や安全性や機能性の科学的根拠が不十分だと新たに判明した時、また効果の根拠となる「機能性関与成分」の含まれている量が届け出時点より少なかった時などに必要だとされています。/撤回されている1500件のうちの多くは販売の終了を理由にしていますが、中には機能性に科学的根拠があるという主張をとりやめたものも含まれています>(NHKニュースオンライン、4月12日)

というわけである。さらに、届出制ということで、企業による商品の管理監督を、消費者庁や厚労省がチェックできるわけである。先の調査もこうした日頃からの連携が、素早い対応を可能にしている。

安倍政権時代に行った「機能性表示食品制度の創設」を「安全性の緩和」などと主張するリベラル系識者もいるが、確かにトクホからみれば、規制緩和に見えるかもしれないが、きちんと科学的根拠をもっているかを精査されている。さらに、健康食品全般からみれば規制強化である。筆者の目には、全体としては規制強化に見えるが、いずれにしろ、安全性の緩和などという一面的な話ではないことだけは事実だ。安倍政権の批判の文脈で、食品の問題を扱うのは無理がある。

安倍のせいなのか、小林製薬のせいなのか

そして、今回の事件である。

朝日新聞の取材(4月13日付け)に応じた猪阪善隆・大阪大教授(腎臓内科)は、以下のような専門的見解を示している。

<猪阪教授は「あくまでデータからの推論」とした上で、「長期間の服用で発症したというより、比較的短期間の服用で発症したと考える方が合理的。多くの人が発症していることを考えると、比較的作用が強い物質が含まれていたのではないか」とする>

つまり、サプリメントや機能性表示食品の問題というよりも、小林製薬の紅麹サプリメントに、何らかの毒物が混入した疑いが強いということである。その毒物は、青カビから生成される「プベルル酸」だという見解が主流だが、<猪阪教授は「まだ原因とは特定はできていない。動物実験をして同じような症状が出れば原因と言えると思う」と話す>(同紙)なのだという。

産経新聞の偏向報道に失望

新聞報道では、床にこぼれた紅麹を戻しただとか、過去にもトラブルがあったなどと報じているが、今回の問題とは全然関係がない。むしろ、なぜ、関係のないことをネチネチと粘着質に報じているのかがさっぱりわからないぐらいだ。

もっとも失望したのが、産経新聞だ。トップ面に大きく『機能性食品 健康被害18製品で117件』と報じた。この見出しから受ける印象は、機能性表示食品への悪意だ。あれだけ毎日毎日広告を載せておいて、よくここまで憎悪をぶつけられるなと感心すらした。

健康被害と言っても、下痢や湿疹が多く、死亡事例もない。お酒飲んでも、下痢や湿疹、入院ぐらいするとは考えないのだろうか。産経新聞の記者は、どうしてここまで偏向した見出しをつくったのだろう。

さも機能性表示食品制度特有の瑕疵であるかのように論じている

健康食品とか、機能性表示食品、サプリメントに恨みでもあるのかという識者も散見される。今後も今回の事件と関係のない同様の主張を続けるなら実名入りで批判させてもらいたいと思う。

一つ一つを取り上げるのは今回は避けるが、簡単に彼らの言い分を総括すれば、いわゆる健康食品を含めて食品全般に適用すべき安全性、食品衛生の話を、さも機能性表示食品制度特有の瑕疵であるかのように論じているということだ。

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