患者母、「脳脊髄液減少症」の治療充実を 茨城県内議会に請願 自治体支援求め奔走

血圧を測る脳脊髄液減少症の長男(篠原克子さん提供)

交通事故の後遺症などで頭痛などの症状が現れる疾患「脳脊髄液減少症」の治療体制充実を求め、患者の母親が茨城県内の市町村議会に請願を続けている。疾患を巡っては受け入れ可能な医療機関が少なく、県内に専門医はゼロ。母親は1人で患者会を立ち上げ、自治体の支援を求め奔走している。

脳脊髄液減少症は▽明らかな原因がない特発性▽交通事故やスポーツ、日常生活での転倒、暴力などの外傷性▽脊椎手術、腰椎穿刺(せんし)、整体治療など医原性-などが原因で発症。脳や脊髄を包んでいる硬膜やくも膜に裂け目が生じて脳脊髄液(髄液)が漏れ出して起きるとされる。主な症状は頭痛や倦怠(けんたい)感、めまい、耳鳴りなど。潜在患者数は国内で数十万人と推定されているが、診断基準や治療法は確立していない。

昨年10月に患者会を立ち上げたのは同県筑西市の篠原克子さん(54)。篠原さんによると、長男(35)は高校生の頃にひき逃げ被害に遭い、2カ月後に頭痛や視力低下を訴え始めた。脳脊髄液減少症と診断されたのはその半年後。本人の血液を患部に注入する「ブラッドパッチ(硬膜外自家血注入療法)」が有効と聞いて試したが、頭痛やめまいが和らぐことはなく、学校には1時間しかいられなかったという。

診断から18年が過ぎた現在はほぼ寝たきりの生活。5分以上起き上がると「頭が握りつぶされる感じ」(長男)が続いており、3カ月置きに静岡県内の病院へ通っている。

篠原さんは「こんなに長引くと思っていなかった」と語り、ブラッドパッチ以外の療法を模索。病状の経過や海外の治療法についてブログで発信してきた。

昨年からは、▽茨城県内に専門医のいる病院を1カ所確保するよう県に求める▽難治性患者の診断基準を確立して指定難病に追加するよう国に求める意見書を提出する-の2点について、市町村議会に請願を提出。これまでに桜川、筑西、下妻、阿見の4市町で採択、常総市で趣旨採択された。水戸市は継続審議となっている。6月にはひたちなかなど7市町に提出予定だ。

篠原さんは「難治性患者の治療法確立など根本から変えなければならない。困っている人はごまんといる。活動が全国に広がれば」と話した。

© 株式会社茨城新聞社