『女子小学生に人気のVTuber』TOP3を分析 ホロライブ勢と並び2位に輝いた「甘狼このみ」とは

■なぜ人気? 女子小学生にも浸透するVTuber・甘狼このみ

先週もさまざまな展開が続いたバーチャル業界。VTuberの方面からは興味深い調査結果が届いた。小学館の『ちゃお』による読者アンケートとして、高学年の女子小学生1000名に「好きなVTuber」を調査したというものだ(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000104282.html)。

発表されたランキングは上位3名が公開。その内訳は、1位が兎田ぺこら、2位が甘狼このみ、3位が宝鐘マリン、というものだった。

1位と3位は大手プロダクションであるホロライブ所属タレントがランクイン。その人気は女子小学生だけでなく日本全国、ともすればグローバルなものだ。一方、2位にランクインした「甘狼このみ」については、聞きおぼえのない人もいるかもしれない。

甘狼このみは2022年12月デビューを果たしたVTuberで、プロのイラストレーターでもある。チャンネル登録者数は本記事執筆時点で約54万人。現在は株式会社Million Productionが運営するVTuber事務所・ミリプロに所属するタレントだが、デビュー時は個人で活動を開始していた。ミリプロ自体、甘狼このみが設立した個人運営事務所から出発しており、法人化も今年4月に入ってからだ。

ザッとまとめると、「いま勢いのある新たなスタープレイヤー」といったところか。そんな逸材が女子小学生から大きく支持を集めているのは興味深い。上記調査報告の中では、人気の秘訣は「イラストの描き方を解説するショート動画」にあるのではないか、と推測されている。いわば「クリエイティブ活動を通した人気」と言えるだろう。

調査を行った『ちゃお』の編集長は、女子小学生に人気を集めるVTuberの傾向について、「絵や歌が上手く、見た目も可愛らしいアイドル系VTuberです。ゲームやイラストを描くこと、歌を歌うことなど、まさにJS(※筆者注:女子小学生)が興味を持っていることを発信しているので、親近感があり、共感性も高いです」とコメント。また、デジタルネイティブが多数を占める世代ゆえに、世間的にはめずらしい在り方をしているVTuberも自然に受け入れているのでは、とも考察している。

広く拡散していったカルチャーは、生まれた当初では想像もつかない層へ定着することがある。かつてニコニコ動画でネットカルチャーとして育まれたVOCALOIDも、いまや10代の女性に浸透しつつある。VTuberもまた、世代を超えたファンがつく文化へと成長していくのだろうか。

■TBS発Vシンガーが鮮烈デビュー コンポーザーにjon-YAKITORY、RED、堀江晶太ら参加

3月30日から4週連続で開催されたメタバース音楽フェス『META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ』がフィナーレを迎えた。4月21日の最終公演は、春猿火、幸祜、キヌ、名取さな、という、いま勢いのあるバーチャルアーティストが集結。『VRChat』に設けられた会場全体を支配するような空間演出も相まって、多くの観客の度肝を抜くステージとなった。

そして、新たな歌声がここで産声を上げた。TBS発バーチャルシンガー・猫 The Sappinessが同ライブでデビューしたのである。4月21日公演の二番手として現れ、「BORN」「My Baby」「Star_Gazer」とオリジナル曲を3つも披露。秀逸な歌唱力を披露しつつ、「猫から人型になりたてで、人語は勉強中」という設定を踏まえてか、不可思議な語彙と語尾とともに発話していたのが印象的だ。

jon-YAKITORY、RED、堀江晶太など、各楽曲のコンポーザーも豪華なうえ、「Star_Gazer」はその日のうちにフルアニメーションMVも公開。大手TV局発のバーチャルタレントとして、これ以上とない“鮮烈なデビュー”を飾ったことはまちがいない。

なお、5月2日21時には『VRChat』内で猫 The Sappinessのデビューライブ再上演があるとのことだ。気になる方は足を運んでみてほしい。また、『META=KNOT 2024 in AKASAKA BLITZ』は各日ともアーカイブが残されているので、見逃した人はこちらもぜひ視聴をオススメする。

■25周年を迎えた『シスター・プリンセス』から、バーチャルな特別企画が“再び”動き出す

メディアミックスコンテンツ『シスター・プリンセス』は25周年を迎えた。「生まれてから四半世紀経った」と記せば、流れた時間の大きさをよく感じ取れるだろうか。

そんな節目に、「25周年プロジェクト」が発表された。「クラウドファンディングの実施」、「千影の3Dモデル制作決定」、「『HoloModels』対応デジタルフィギュア発表」、「作中スポット『北のはなれ』バーチャル空間制作」、そして「バーチャルライブ開催」の5本立てだ。作品を愛し続けるファンへの大きなプレゼントと言えるが、そのベクトルが3D・バーチャルへ寄っていることが気になる人もいるかもしれない。

その源流は、5年前に始動した「VTuber可憐」に端を発する、20周年企画にあるだろう。VTuberブーム真っ盛りだった当時、さまざまな“妹”が生配信を行い、バーチャルライブも開催した『シスター・プリンセス』に、ファンだけでなくVTuber界隈も大きく注目していた。5年の月日を経て「バーチャルな妹たち」が再び動き出そうとしている。

(文=浅田カズラ)

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