「この人はまさか…」49歳・IT企業経営者、共同経営者から告げられた突然の退職。真の理由は?…明かされた“残酷な真実”に、涙【相続診断士の探偵が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「会社を辞めたい」長く一緒に働いてきた仲間が突然、身を引く決意をした際、何か違和感を感じるなら、その嫌な予感は的中している可能性が高いです。「大切な仲間を信じたい」という想いから正常な判断ができず、後に大きなダメージを負う危険性があります。MJリサーチ綜合探偵社の取締役であり、相続診断士でもある若梅秀孝氏が、実際に寄せられた依頼内容をもとに解説する本連載。この記事では、共同経営者から突然、退職を告げられたIT系企業者の男性・49歳からの依頼内容をもとに詳しく解説します。

共同経営者から突然退職を告げられたが……真の理由は?

今回の相談者は、IT系企業を経営している北村さん(男性・49歳)です。

北村さんは8年前に、以前同じ会社に勤務していた同僚のAさんと一緒に独立し、会社を立ち上げました。会社は順調に収益を伸ばし、今では40人以上の従業員を抱える規模にまで成長しました。

ところが、Aさんが突然、「実家の母の介護が必要になったから、会社を辞めたい」と言い出したのです。北村さんは「介護をしながら仕事ができる体制にするから続けてほしい」と伝えましたが、Aさんは「どうしても辞めなければならない」の一点張り。

「実は少し前に、社員の一人から、Aさんが競合他社の幹部と楽しそうに飲んでいるのを見かけたという報告を受けました。そのときは、人違いではないかと思いましたが、Aさんの退職の理由や最近のよそよそしい態度を不自然に感じて、念のため調べた方がよいかと思い……」

苦楽を共にしてきた共同経営者を信じたい

北村さんとAさんは新卒で入社した会社の同期で、入社以来20年以上、苦楽を共にしてきました。

「Aさんとは、困難なプロジェクトも一緒に乗り切ってきました。仕事の面でも信頼していましたし、プライベートでも仲が良く、仕事帰りに飲みに行ったり、休みの日にキャンプに行ったりしていました。お互いに結婚して子どもが生まれた後も、家族ぐるみで仲良くしていました。私にとってAさんは公私ともに信頼できる大切なパートナーなんです」

北村さんは社会人になって以来、ずっと一緒に過ごしてきたAさんとの深い絆を信じたいという気持ちが強く、社員の一人から、Aさんが競合他社の幹部と楽しそうに飲んでいるのを見かけたと聞いても、人違いだと思い込もうとしていました。Aさんのことを疑う自分が許せず、誰にも相談できずにいたのです。

真実を知らず放置した場合に潜む、重大なリスク

法人からの調査依頼を数多く受けている弊社では、北村さんと同様に、会社の共同経営者や幹部から突然退職の申し出を受けたという相談を多数受けています。相談者の多くは、苦楽を共にしてきた仲間を信じたいという気持ちが強く、嫌な予感がしても、調査をすることを躊躇します。

しかし、真実を知らずに放置すると、会社を辞めた元共同経営者や元幹部が以下のような行動に出る可能性があります。

・会社の機密情報を持ち出して競合他社に転職する

・優秀な社員を引き連れて、新しい会社を設立する

・新しい会社を設立して、大口の顧客を奪う

このような行動を取られると、会社の経営に大きなダメージが生じてしまいます。最悪の場合、経営破綻の危機に追い込まれるリスクもあるのです。会社や従業員を守るためにも、早急にリスク回避策を講じるべきです。

探偵の行動調査はリスク回避策として有効?

このような会社の危機を救うためのリスク回避策として、探偵の行動調査は非常に有効です。会社を辞めた元共同経営者や元幹部が、競合他社への転職を考えている場合、転職先の幹部と会食をすることが多いからです。

行動調査を行い、誰と会っているかを確認すれば、どの会社への転職を考えているかがわかります。また、このようなケースでは、会社のPCからデータを持ち出す可能性が高いため、スマホやパソコンの操作履歴を読み取るデジタル・フォレンジックという技術を利用した調査を併用することもあります。デジタル・フォレンジックを用いた調査では、スマホやパソコンの消去されたデータを復元して読み取ることも可能です。

Aさんの裏切り行為が行動調査で明らかに

北村さんは、Aさんが退職する本当の理由を知るためには、探偵による行動調査が必要だと判断しました。北村さんから依頼を受けて、Aさんの行動調査を実施したところ、以下のことが明らかになりました。

・高級料亭で競合他社の幹部と会食していた

・個室居酒屋で顧客と会食していた

・居酒屋で女性と食事した後、ホテルで過ごしていた

一緒にホテルに入る女性の写真を見て、北村さんは「この人はまさか……」と顔を歪めました。この女性は競合他社の従業員だそうです。

状況証拠ではありますが、Aさんの行動をみる限り、Aさんの退職の本当の理由は、実家の母親の介護ではなく、競合他社への転職である可能性が濃厚だといえます。

北村さんは、調査の結果を受けて、目に涙を浮かべていました。その後、Aさんと直接話をすることを決意しました。Aさんに、競合他社の幹部との会食や、同社の女性社員との密会についての噂を聞いたと伝え、「もし転職を考えているなら、考え直してほしい」と自分の気持ちを素直に伝えました。

Aさんは、北村さんの話をほとんど無言で聞いていたそうですが、その後しばらくして、競合他社への転職を考え直すことを約束してくれたそうです。

「何かおかしい」…嫌な予感は的中する?

長く一緒に働いてきた仲間が突然退職を申し出たとき、その理由について「何かおかしい」「本当は違う理由があるのでは?」などと感じた場合、その嫌な予感は的中していることが多いです。しかし、「長年、苦楽を共にしてきた仲間に裏切られるなんてあり得ない」、「大切な仲間を信じたい」という気持ちが、正常な判断の邪魔をします。

今回ご紹介したケースのように、行動調査を行って真実を知ることは、将来起こり得る重大なリスクを回避して会社を守ることにつながります。

大切な仲間を疑いたくないために、誰にも相談できず一人で悩みを抱えてしまう方は多いと思いますが、リスクを回避するためにも一人で抱え込まずに信頼できるプロに相談することが大切です。

若梅 秀孝

MJ リサーチ綜合探偵社

取締役

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン