事を為すことこそ政治!出来損ないを愛せ!秘書・朝賀昭氏が明かす田中角栄の政治哲学とは? 選挙ドットコムちゃんねるまとめ

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2024年4月7日に公開された動画のテーマは……「できそこないの人間を愛せ 田中角栄の政治哲学とは」

田中角栄元総理の政治姿勢を通して見える哲学や人となり、中選挙区時代の政治リーダー像を、32年間田中氏の秘書を務めた朝賀昭氏から伺います。

【このトピックのポイント】
・人が好きな田中角栄氏、小沢一郎氏を「難のない馬」に例える
・田中角栄事務所で受けてはいけない「陳情」とは
・秘書朝賀氏が苦言「政治にカネはかかる。でも今のは……」

「難のない馬はいない」「政治とはつまり事を為すことだよ」

1962年に18歳で田中角栄元総理の秘書となり、「生涯田中角栄の秘書」と呼ばれる朝賀氏が思い出す田中角栄氏の人となりを一言で語ると……

朝賀昭氏「田中先生は、『人好き人間』なんだよね」

朝賀氏は、半世紀以上付き合いのある小沢一郎氏のエピソードを紹介します。

周りからの頼み事を引き受けてはくれるけれど、決して「ウェルカムではない」小沢氏。そんなある日、秘書たちから小沢氏に、選挙応援をお願いしてもいい返事がなく、朝賀氏が田中氏に愚痴をこぼしたところ、

朝賀氏「(おやじさんが)難のない馬はいないんだよ。(小沢)一郎がそんなに立派だったら俺がつかわれてるよって」

「重いところで政治をやってきた小沢さんのことを愛してるんだろうな、この人はって思ったよ」と、田中氏の小沢氏への愛に、思わず笑ってしまったと朝賀氏。

田中角栄氏は、政治をどのように考えていたのでしょうか。

朝賀氏は、秘書になって10年くらいたった頃、田中角栄氏に「政治って一言で言うとなんですか?」と尋ねたエピソードを語ります。

“政治ってのはつまり事を為すことなんだよ。『巧言令色鮮し仁(※1)』という言葉があるが、政治は事を為さなきゃ政治じゃないんだ。我々政治家は、評論家でも学者じゃない。理屈ばかりこねてたってだめなんだ。困っている人がいたら、ひとつでもふたつでも、その人たちのために寄り添って、事を為していくことこそ政治なんだ”

※1『論語』にある言葉。言葉巧みに人の心を誘い、いつも人の顔色をうかがうような人間は、真心に欠けているのだから心せよという教訓

大きなビジョンを掲げ、数々の議員立法や「日本列島改造論」といった仕事を成し遂げた田中角栄元総理。

田中角栄氏が亡くなってから30年。第三者として冷静に振り返るようになっても、田中氏の能力の大きさと、根底にある人間への愛は素晴らしいと朝賀氏は語ります。

「人の一生に関わる」田中角栄事務所で、引き受けてはいけない陳情2つ

中選挙区の時代、政治家の事務所にはさまざまな陳情が持ち込まれたと聞きます。朝賀氏も「どこの事務所も(陳情)やってたよね」と笑います。

1日に何十、何百の陳情に向き合ったといわれる田中角栄氏。スピード感も解決力はもちろんのこと、それ以上に陳情の場で「できないことはできない。でもやるだけやってみるよ」と判断し、相手にその場で伝える率直さがあったといいます。

天下の陳情から子どもの就職まで幅広く陳情を受け付けた田中角栄事務所。御法度が2つだけあったそうです。

朝賀氏「うちの仕事で御法度は、交通違反のもみ消しと裏口入学。これに触れたら即クビになったと思う」

これらには、はっきりと理由が説明されていたと朝賀氏は語ります。

交通違反は人の命を損ねる恐れがあるからさわってはいけない。

就職なら筆記試験ができなくても「人柄がいい」」「体が丈夫だから」「責任は俺が持つから」と推薦できるけれど、学校に入る時に「体が丈夫だから」とは言えない。

朝賀氏「うちには就職担当秘書がいたんだよ。田中事務所を経て就職した人が3000人もいるんだから。そのうち2000人は選挙区の人だよね」

田中角栄氏は、先ほどの「政治とはつまり事を為すことだよ」の後に、

“政治家の仕事は一生なんだ。生まれた子どもの名付け親から葬儀委員長まで、人の生涯に携わるのが政治なんだ。そういうところで事を為していくのが本当のまつりごとなんだ”

朝賀氏は、田中角栄氏を「素直なかただったよ」と懐かしみます。

今も昔も政治にカネはかかる。でも今の話はせこいよね

MC松田馨「事を為すためにも、ある種お金が必要だった?」

朝賀氏「ただ、時代がね。非常に速いテンポで変わってるから、昔許されたことが今も許されたかっていうと、それは違うよね」

政治には、今も昔もお金がかかったと朝賀氏は語ります。その中で、大金が行き交ったとされる田中角栄氏の「金権政治」批判に対し、朝賀氏は「目くそ鼻くそだ。大判振る舞いするかしないか、あるかないかの違い」と喝破します。

MC松田「三木武夫先生(元総理大臣・田中角栄氏の後、就任)をもってしても、『田中先生が使ったお金は右から左で、田中先生の前を通り過ぎていった。集めて配って、人のために使っていた』と聞いて、なるほどなあと思ったんです」

朝賀氏「10年ぐらい(党への)献金高がナンバーワンだったんじゃないの?当時は、ひとりの政治家が政治資金団体を5つも6つも持ってたの」

それらの政治資金団体の代表には、「趣味は田中角栄」とまで言われた二階堂進(元内閣官房長官)や西村英一氏(元自民党副総裁)が就任。時代の違いを感じます。

MC松田「今の政治資金パーティーの話を聞いてると、悲しいというか情けないというか……」

朝賀氏「そういう時代になったんでしょう。だけど、僕らからいうと、パーティーやって集めてそれを配って……親分としてはせこいなあって気がするよね。面倒を見てこそ親分」

朝賀氏は、かつての自民党の自浄能力も懐かしみます。

1973年、権力に対し立ち上がった青嵐会(※2)のような若手議員や、学生運動にもおおらかに向き合った田中角栄氏。「矩を踰えてはいけないが、権力に対して批判的になるのは、若者のはしかみたいなものだ」(※3)と笑っていたと朝賀氏は語ります。

※2 石原慎太郎氏が結成を主導した、自由民主党若手の派閥横断的政策集団

※3 「七十にして心欲するところに従い、矩を踰えず」(『論語』)

動画本編はこちら!

とことん人を愛し、政治に生きた田中角栄氏。その哲学とは。

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