『366日』明日香が叶えた“遥斗が見たかった景色” “和樹”綱啓永に与えられた謝罪の機会

明日が来るのは当たり前じゃない。そう分かっていても、私たちは“またいつか”を期待してしまう。どこにも保証なんてないのに。だけど、そうやって信じることで人は前を向いて生きていけるのかもしれない。『366日』(フジテレビ系)第3話では、遥斗(眞栄田郷敦)が見たかった景色を明日香(広瀬アリス)が叶えた。

一命は取り留めたものの、意識が回復しない遥斗。このまま一生目覚めない可能性があると告げられてもなお、諦めきれない明日香は遥斗を見守っていく覚悟を決めた。その強い思いに、当初は明日香の未来を想うがゆえに反対していた花音(中田青渚)も心を動かされる。長い戦いを乗り越えていくため、手を取り合った2人の間には信頼関係が生まれ始めていた。

そんな中、遥斗が準備していた飲食店「パトリア」を引き継いだ同僚の木嶋(岐洲匠)が診断書を取りにやってくる。その際、木嶋から遥斗が店舗の壁面に飾ろうとしていたアート作品に心当たりはないかと尋ねられた明日香。資料に残された「壁面番号 No.3」という文字をヒントにアート作品を探し始めたところ、それが高校時代に和樹(綱啓永)が写真コンクールで入賞した作品のタイトルであることが分かる。遥斗は事故に遭う前、和樹に写真を使わせてほしいと交渉していたのだ。

しかし、2人は8年前から気まずい関係にあり、和樹はその話を断っていた。同級生たちの集まりにも顔を出さなくなり、明日香たちとも連絡を絶っている和樹。きっかけは、母親の再婚だ。和樹の両親は離婚しており、経済的に厳しい状況に置かれていた。きっとそれがなかったら、和樹は写真の夢を追いかけていたのではないだろうか。だが、母親に苦労をかけまいと和樹は国公大学に進学。良い会社に就職し、自分が稼いで母親の面倒を見ようとしていた。それなのに母親がお金のある男性と再婚したことで、和樹は裏切られた気持ちになったのだろう。

対して、遥斗は両親が揃った家庭で、父親が営むお好み焼き屋を継ぐという夢を伸び伸びと追いかけている。お金に振り回されることも、親のプレッシャーを感じることもない遥斗の状況は和樹からしたら眩しく感じたはずだ。そんな中で遥斗に心配され、自分が惨めになった和樹は自ら距離を置いた。

謝りたい、いつか謝れるときが来るだろう。そう思っているうちに遥斗が事故に遭ってしまった。後悔しても、もう遅いとどこかで諦めていた和樹に謝罪の機会を与えたのは明日香だ。明日香は、開店前の「パトリア」に和樹を招待する。店内の壁面には、明日香が探し回ってようやく見つけた和樹の写真が飾られていた。そこに写し出されているのは、遥斗と和樹が初めて言葉を交わした日に一緒に見上げた、管理番号「No.3」の桜の木。 遥斗が話しかけてくれたおかげで和樹は明日香たちと仲良くなり、かけがえのない青春を送ることができた。

写真を見てそのことを思い出した和樹は遥斗が入院する病院へ行き、ずっと言えずにいた「ごめん」という言葉を伝える。遥斗は眠ったままで、反応はない。だが、人は意識がなくなっても、耳だけは聞こえると言われる。だから、和樹の思いも、後日オープンしたお店に集合した明日香、莉子(長濱ねる)、智也(坂東龍汰)、和樹たち4人の笑い声もきっと遥斗に届いているのではないだろうか。

「友達同士でも、カップルでも、家族連れでも、おひとりさまでも、誰でも気軽に入れて、居心地の良い店にしたい」と明日香に語っていた遥斗。“古里”を意味する「パトリア」には今、遥斗が見たかった景色がある。この場所で明日香たちが、遥斗を「おかえり」と迎える日がいつか来るはず。保証はどこにもないけど、そう信じてみたい。

(文=苫とり子)

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