遺族年金〈月13万円〉…夫を亡くした妻、子が大学進学も〈100万円〉の収入減に悲鳴「ごめん、大学は諦めて」

大黒柱を失った家族にとって、公的保障となる遺族年金はなくてはならないもの。しかし「これからお金がかかる!」というタイミングで大きく減額。子どもの進路を左右しかねないインパクトを与えます。みていきましょう。

平均的な大卒サラリーマンが45歳で亡くなったら…遺族年金はいくら?

遺族年金は、大きく、国民年金に由来する遺族基礎年金と、厚生年金に由来する遺族厚生年金があります。亡くなった人の年金の加入状況や、受け取る人の年齢、優先順位などの条件を満たしている場合に、受け取ることができます。

残された遺族がどれほどの遺族年金がもらえるのか、大学を卒業して依頼、大卒サラリーマンの平均給与を手にしてきた45歳男性が亡くなったとします。また家族は妻と子供の3人家族としましょう。

大卒45歳の平均給与は、月収で46.7万円、年収で774.5万円。そんな、一家の大黒柱が亡くなったとして、遺族が受け取れるのは、まず「遺族基礎年金」。これは「子のある配偶者」または「子」が受け取ることができます。受取額は「81万6,000円+子の加算額」。子の加算額は、1~2人目までは各234,800円、以降は各78,300円。よって、遺族基礎年金は年105万0,800円となります。

次に遺族厚生年金。こちらは、子がいる/いないの要件はありません。遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額。計算式としては「{(平均標準報酬月額×7.125/1,000×2003年3月までの加入月数)+(平均標準報酬月額×5.481/1,000×2003年4月以降の加入月数)}×3/4」となります。また受給要件によりますが、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300ヵ月(25年)未満の場合は、300ヵ月とみなして計算します。それによると、遺族厚生年金は年57万9,616円となります。

年間163万0,416円。1ヵ月あたり13万5,868円。これが残された家族に対する公的な保障となります。さらに、ひとり親世帯が受けられるサポートはいろいろ。子が中学生以下であれば児童手当(3歳未満:一律1万5,000円、3歳以上小学校修了:1万円/第3子以降は1万5,000円、中学生:一律1万円)。親の所得によって全額支給か一部支給、または不支給かが決まりますが、18歳までの子には児童扶養手当てが支給されます。

自治体ごとに独自サポートなどもあり、ひとり親世帯へのサポートは結構厚くなっています。仮に夫が亡くなったことで住宅ローンは団信で完済というひとり親であれば、十分な保障とはいえない金額ではあるものの、遺族は最低限の生活は送ることができそうです。

子供の大学進学を機に激減する「ひとり親」への遺族年金額

一家の大黒柱を亡くしたひとり親世帯。子供が小さいうちは何かと保障が大きいですが、成長するにしたがって公的保障は小さくなっていきます。

――長男の大学進学が決まりました!

そう投稿した、40代女性。8年前に夫を亡くし、以来、母子二人三脚で頑張ってきたといいます。そして今年、第一志望の大学に合格。晴れて大学生になることができたそうです。

ただ「分かっていたけど、このタイミングで収入が100万円近く減るのは、かなり痛い」と女性。100万円というのは、遺族基礎年金。子の要件である「18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人」からは外れてしまい、遺族基礎年金の支給は、この春からなくなってしまったわけでです。

大学の進学にあたり、初年度の納付金は、国公立でも年80万円強、私立文系で120万円弱、私立理系で150万円強。かなりの金額です。確かにここで年間100万円の収入減には、思わず悲鳴をあげてしまうほどのインパクト。

【大学初年度納付額】

◆国立大学:81万7,800円

(内訳)入学金:28万2,000円、授業料:53万5,800円

◆私立大学(文系学部):118万8,991円

(内訳)入学金:22万5,651万円、授業料:81万5,069万円、施設設備費:14万8,272万円

◆私立大学(理系学部):156万6,262円

(内訳)入学金:25万1,029円、授業料:113万6,074円、施設設備費:17万9,159万円

◆私立大学(医歯系学部):489万0,539円

(内訳)入学金:107万6,278万円、授業料:288万2,894円、施設設備費:93万1,367円

――ごめん、やっぱり無理。うちにはお金がない……大学は諦めて

そう息子に懺悔する母。ただ最近話題を呼んだ「大学の無償化」が、ひとり親世帯を救います。「大学の無償化」は、返済の必要がない「給付型奨学金」と「授業料等減免」がセットとなった「高等教育の修学支援制度」のことで、24年度からはその対象が多子世帯や理工農系の中間層に拡大しました。

支援額は世帯年収で変わり、たとえば世帯年収が270万円未満(目安)の場合、支援額の上限が授業料免除70万円、給付型奨学金91万円。収入などの要件のほか、進学先で学ぶ意欲がある学生かどうかなども審査の対象となりますが、十分に大学に通えるだけの支援が受けられます。

――ひとり親だから……

そんな理由で大学進学を諦める必要はないのです。

[参考資料]

日本年金機構『遺族年金の制度』

こども家庭庁『児童手当制度のご案内』

こども家庭庁『児童扶養手当について』

文部科学省『国立大学等の授業料その他の費用に関する省令』

文部科学省『私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査』

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

文部科学省『高等教育の修学支援新制度』

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