訓練したツシマヤマネコ 初めて放獣 昨年保護の雄「ひかり」 長崎・対馬

ケージから出るツシマヤマネコの「ひかり」=対馬市内

 国の天然記念物ツシマヤマネコの絶滅防止のため、環境省が22日、保護後に野生順化訓練をした雄の「ひかり」(推定1歳)を長崎県対馬市上県町の山中で放獣した。同省が整備した「ツシマヤマネコ野生順化ステーション」(同市)で訓練を受けた個体を放獣したのは初めて。
 ひかりは昨年7月、同町の道路で見つかった。交通事故に遭ったとみられ、同省の「対馬野生生物保護センター」(同市)で治療を受けた。当時、推定生後2カ月ほど。捕食や危険回避といった自然で生きる力を同ステーションで養った。
 放獣は発見した道路から数キロ離れた場所で、ひかりを発見し通報した同市の自動車整備業、須川聖司さん(35)も立ち会った。野生に帰っていく様子を見届け「(発見時から)大きくなったんだな」としみじみ。「自然の中で元気に過ごしてほしい」と笑顔を浮かべていた。
 生存や活動範囲などを確認するため発信器をひかりに付け、追跡調査を約1年間行う予定。同ステーションの谷口晃基・自然保護官は「追跡で得られたデータを用い、訓練メニューなどにフィードバックができれば」と意義について語った。

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