【DeNA】14年ぶり同じユニホーム…筒香嘉智と田代富雄コーチの律儀な絆

5年ぶりにDeNAに復帰した筒香

【赤ペン! 赤坂英一】5年ぶりにDeNAに復帰した筒香嘉智外野手(32)は、現在、二軍戦に出場しながら調整中だ。一軍では三浦監督に加えて、今年巡回から一軍専任に配転された田代打撃コーチも復帰の日を待っている。

筒香が新人だった2010年、田代コーチは二軍監督。横須賀の旧練習施設の寮に泊まり込んで指導に当たり、寮住まいの若手には夜も素振りをするよう指示していた。が、室内練習場へ視察に行くと、ルーキーの筒香だけがやって来ない。

さてはもう寝ているのか。翌日、田代二軍監督は筒香に理由をただした。

「ゆうべはどうして室内に来なかったんだ?」

すると筒香は答えた。

「グラウンドでバットを振っていたんです。バッターボックスに立って」

まだ18歳の高卒新人が、たとえ夜間練習でも、実戦をイメージしてスイングを続けていたのだ。田代二軍監督は驚いた。

「自分からそんな練習をする新人は初めて見た。いやあ、こいつは大物になるなと思ったよ。実際、俺の方から筒香に何か教えたことはない。新人の時から何も教える必要のない選手だったんだ」

田代二軍監督は筒香をイースタン・リーグで4番に抜てき。筒香も期待に応え、二軍ながらも26本塁打、88打点をマークして2冠を達成した。

しかし、そんな2人の師弟関係はこの1年だけで終わった。田代はこの年のオフに横浜を退団し、韓国SK、楽天、巨人と他球団を渡り歩くことになる。その両者の距離がもう一度縮まったのが、2017年2月だった。

この時、侍ジャパンの主砲だった筒香は、第4回WBCに備えて宮崎で合宿中。巨人の二軍打撃コーチとなった田代も、同じ宮崎キャンプで若手の指導に当たっていた。

「そうしたら、筒香から電話がかかってきたんだよ。せっかく近くにいるので、あいさつをしたいと」

近くと言っても、宮崎市中心街にあるジャパンの宿舎から、郊外の青島の巨人二軍の宿舎までは車で15~20分かかる。

「だから電話で済むことだと思っていたら、筒香は『これから行きます!』って言って、本当にタクシーを飛ばして来たんだよ。横浜では1年かぶってただけで、そんなに深い縁があったわけでもないのに律義なやつだよな」

田代コーチはそう振り返ったが、筒香にとっては忘れ難い薫陶を受けた1年目だったのだろう。そんな師弟が、14年ぶりに同じユニホームを身にまとって、ともに一軍で戦う日がもうすぐやってくる。筒香の打棒爆発を期待したい。

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