誰もが細谷真大の復活を待ちわびている。漂わせるゴールの予感。「チームを勝たせる意味でも自分が取る」と決意【U-23アジア杯】

ストライカーは繊細だ。

ちょっとしたきっかけで感覚が乱れてしまう。今まで入っていたシュートが枠に飛ばず、決まったと思った一撃がバーやポストを叩く。そのたびに天を仰ぎ、気がつけば、蟻地獄のように抜け出せない沼にハマっていく。

そうした負のスパイラルに陥っているのが、今の細谷真大(柏)だろう。

待てど暮らせど、ゴールが遠い。打っても、打ってもネットを揺らせず、苦悩の日々が続く。最後に公式戦で得点を奪ったのは、昨年11月25日のJ1第33節の鳥栖戦。実に5か月近く歓喜の瞬間から遠ざかっている。A代表の一員として臨んだ1月のアジアカップでも、J1の舞台でも、何度も悔しい想いを味わってきた。

無得点のままで、パリ五輪のアジア最終予選を兼ねるU-23アジアカップに参戦。1つゴールが生まれれば、一気に流れが変わるだけに、一発勝負のノックアウトステージを前に、結果が欲しかった。

だが、グループステージの3試合を終えてノーゴール。惜しいシュートは放っているが、相手のブロックやGKの好守に阻まれている。

苦しい状況が続いている。それでも、状態は決して悪くない。

中国との初戦を迎える前に話を聞いた際に、細谷は「良いコンディションのなかで、良いトレーニングができている」と胸を張り、「ゴールもあとちょっとのところまで来ている」と口にした言葉に嘘はない。

競り負けるシーンはあるが、武器である推進力は健在。スタメンで起用された中国戦では身体が動いており、途中出場となったUAE戦では、85分と90+2分に惜しいシュートを撃ち込んだ。

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そして、迎えた韓国との最終戦。決勝トーナメントを見据えてベンチスタートとなった細谷は77分からピッチに立つと、0-1の劣勢を跳ね返すべく精力的に動いてチャンスに絡んだ。

83分には惜しくもDFのブロックに阻まれたが、ゴール前で右足を振り抜く。86分には山本理仁(シント=トロイデン)の左CKに頭で合わせた。90+3分にも山本の右CKからヘディングでゴールを狙うなど、フィニッシャーの役割を果たそうと懸命に戦った。

「チャンスには絡めていますし、起点も少しは作れたのかなと思う」としつつ、「数字というところがないので、そこはしっかり向き合わないといけない」と反省の弁を述べたが、ゴールの匂いを嗅ぎ取っているのは確かだ。初戦よりも2戦目。2戦目よりも3戦目。得点が奪えそうな雰囲気は日増しに高まっている。

ここからは、負ければ終わりのノックアウトステージに入る。他国に目を向ければ、エースストライカーと呼べる選手がゴールを重ねており、韓国ではイ・ヨンジュンが3ゴールを挙げるなど、目に見えた結果を残している。点取り屋の存在は、勝ち上がるうえで必要不可欠。現状で日本はFW陣にゴールがなく、細谷の復活を誰もが待ちわびている。

次こそは日本を勝利に導くゴールを――。「決めないといけないシーンが今大会もあるので、しっかり決めないといけない。チームを勝たせる意味でも自分が点を取る」と決意を述べた背番号19は復活を果たすべく、覚悟を持ってノックアウトステージに臨む。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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