2024年問題 物流業界の今 長時間労働規制で荷物をリレーで配送

トラックドライバーなどの長時間労働が、4月から規制強化されました。2024年問題で物が運べなくなる可能性が指摘される中、物流の現場は変わったのでしょうか。

トラックドライバーの尾形光彦さん(58)はこの日、宮城県大崎市古川から関東地方の3カ所へ鶏肉を配送します。
古川貨物尾形光彦さん「今回2024年問題対策の一環として始まった仕事です。
実際私は初めてその仕事をやります」

まず到着したのは、仙台市の物流倉庫です。岩手県から来たトラックに積まれていた鶏肉が、尾形さんのトラックへと次々と移し替えられます。この作業に2024年問題が関係しています。

今回配送する鶏肉は、元々生産地の岩手県から直接関東地方に向けて配送されていました。しかし、労働時間の上限規制強化で直接の配送が難しくなったため、中間地点の仙台市で別のトラックに荷物を積み替え配送せざるを得なくなったのです。

荷物を移し替え

4月に始まった規制強化では、これまで上限が無かったトラックドライバーの時間外労働が年間960時間までに制限されました。長時間労働が常態化するトラック業界を改善することが狙いです。

積み込みを終えた午後8時に、高速道路で関東方面に向かいます。
古川貨物尾形光彦さん「時間に遅れないようにとか色々考えますよね。初めての荷物なので、商品の温度管理だったりとか気を付けていこうと思います」

最初の目的地、埼玉県の物流施設に到着したのは午前1時です。すぐに荷下ろしを進めたいところですが、ちょうど別のトラックが作業中だったためしばらくの間待機となりました。課題となっている荷待ちです。

荷待ちを経て荷下ろし完了

約1時間待って、ようやく作業を終えることができました。
古川貨物尾形光彦さん「うちらの便が早いか、前の便が早いかで結構かち合っちゃうよって話ですね。このぐらいは許容範囲かなと、想定内でもあります」

この後、東京都と神奈川県の2カ所へ配送した尾形さんは、休息を取る都内のトラックターミナルに到着したのは、周囲が明るくなった午前5時過ぎでした。会社を出てからの拘束時間は、原則として定められている13時間をわずかに超えました。
古川貨物尾形光彦さん「1カ所で1時間くらい待った所があったので、そこ含めてもぎり13時間から14時間くらいで終わったので、良しとしておきましょうかと。今ちょっと色々な物が入ってますけど、カーテン閉まるんで荷物を前に全部置いて。
マイベッドです」

尾形さんが勤務する宮城県大崎市の運送会社、古川貨物は社員は15人で冷凍食品やステンレス製品などを配送しています。社長の千葉孝男さんは、運送業界の経営が厳しさを増す中での規制強化に頭を悩ませています。
古川貨物千葉孝男社長「廃業する人が増えてきている。運転手さんがなかなか入って来ない。今の燃料高もあるし」

厳しさを増す運送業界

トラックドライバーの有効求人倍率は、全ての職種の平均1.06倍に対して1.97倍と人手不足が課題です。
古川貨物千葉孝男社長「運賃の値上げの要請でございます」
燃料費の高騰も経営を圧迫しています。千葉社長は3月、取引先に対して運賃を10%ほどアップするよう求めました。しかし、思うような回答を得ることはできませんでした。
古川貨物千葉孝男社長「1カ所はすぐ回答を出して、1カ月くらいは遅れますけど値上げしますと。あと残りはもう少し時間くださいというとこですよね。荷主さんも分かってはいるの。でもやっぱり厳しいわけよね」

関東地方3カ所への配送を終えた尾形さんは、午後から空になったトラックに別の荷物を積み宮城県へと戻ります。
2024年に突入してもドライバーの労働環境は、大きく改善されていません。政府の試算では、業務の効率化など対策が行われない場合2030年には輸送能力が34%不足するとされています。
古川貨物尾形光彦さん「自分の問題ではない、物流の2024年問題はトラック業界の問題だろうって考えていると、荷物が届かなくなります。何年か後には、34%の荷物が届かなくなりますって間違いなくくると思うんですよね」

千葉社長は今後、荷主と運送業者が共存できる関係づくりが重要になると話します。
古川貨物千葉孝男社長「物流なくして経済は成り立たないわけだからね。今まであまりにも我々業界を下に下げてしまったわけだね。これからは同じやっぱりレベルにならないと、私は共存共栄できないと思っています」

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