【コラム・天風録】勝者総取り

 目の前の人とじゃんけんをする。負けたら勝者の後ろに回り、その肩に両手を置いて、付いていく。先頭がじゃんけんをするたび、列は延びる。最後は1匹の長いムカデのように数百人が連なった。小学生の頃、全校集会で遊んだ▲「勝者総取り」という言葉を聞き、この体験を思い出した。ITビジネスのことわりらしい。ある企業が突出した技術で国際標準を握ると逆転は難しい。ムカデの先頭のように勝ち続けた企業だけが膨大な利益を得る▲その世界で圧倒的な勝者の米グーグルを、公正取引委員会が初めて行政処分した。インターネットで検索された言葉を広告に連動させる事業が独禁法の問題になり得るという▲生活も仕事も、いつの間にかネットサービスを抜きにしては回らない時代になった。今や電気や水道と同じ公益事業ともいえる。勝者が相応のチェックや規制を受けるのは、当然だろう▲冒頭の遊びは、意外な結末を迎えた。ムカデの先頭が、最後尾にじゃんけんを挑んだ。勝ったのは最後尾。先頭が最後尾の後ろに付くと、全員が一つの輪になった。それまでの勝敗は意味をなくした。舌を出して笑う「元先頭」の、なんと格好良かったことか。

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