【4月24日付社説】相続登記/管理促す狙いに沿う施策を

 相続登記の申請が義務化された。不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記を行う必要がある。正当な理由なく申請をしないと10万円以下の過料を科される。義務化の背景にあるのが、所有者不明の土地の増加だ。九州の面積と同程度の土地が所有者不明となっている。

 所有者不明の土地は、誰にも管理されないため、周辺の環境や治安の悪化を招くとの指摘がある。東日本大震災で集団移転などを行う際に、多くの土地の所有者が分からず事業が停滞したケースが各地であった。所有者を明確にすることは、さまざまなリスクの低減につながることが期待される。

 管理されていない土地をできる限り減らすには、財産の整理を行う相続の際に所有者を明確にするのが最も簡便な方法だろう。

 これまで登記が進まなかった理由の一つに、使っていない土地についてさまざまな書類をそろえて登記するのは、手間がかかることが挙げられる。その上、固定資産税を払ったり、管理の必要が生じたりすることになるため、任意であれば登記しないという場合が多かったとみられる。

 長い間、相続されないままとなっている土地は、相続の権利がある人が増え、協議に時間がかかることが見込まれる。このため自らが相続人であることを申し出ることで、登記義務を果たしたことにできる制度が作られた。

 登記が任意でなくなった以上、誰が土地を相続するのかを明確にする必要がある。義務化を機に、自分が相続の権利を持つ土地などを確認するようにしたい。

 相続人が不要な土地を国に引き渡すことができる制度も昨年スタートした。10年分の土地管理費に相当する金額を国に納付することで土地を手放すことができる。相続人が高齢だったり、相続した土地から遠い所に住んでいたりして、土地の管理を十分に行うことが難しい場合は、この制度の利用を検討してほしい。

 ただ、土地に空き家などが立っている場合は、この制度を利用できない。手放そうとする土地の建物を撤去しようとすると、行政の助成があったとしても多額の費用がかかる。

 所有者を明確にしても、管理が不十分な土地や建物が残るのは、新制度の狙いに沿うものではあるまい。これまで国が何ら対策を取ってこなかったことについて、相続人に新たな義務を負わせる形となるのを考慮すれば、期間を区切るなどの形で、建物撤去に対する支援拡充を検討すべきだ。

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