熊本地震で被災した熊本城宇土櫓[やぐら](国重要文化財)の解体復旧工事が進んでいる。築城時の姿を残す唯一の多層櫓で、現在5階部分の瓦や天井などが取り外され、柱や梁[はり]といった骨組みがあらわになっている。柱の一部は江戸時代から現存しているとみられ、熊本市は今後、科学調査などを通じて年代特定を進める。(前田晃志、山本遼)
3層5階・地下1階の宇土櫓(高さ19メートル)は、慶長年間(1596~1615年)の創建とされ、大天守と小天守に次ぐ「第三の天守」とも呼ばれる。熊本地震では柱や基礎などが大きな被害を受け、全て解体して修理されるのは1927(昭和2)年以来、約100年ぶりとなる。
復旧工事で文化財調査を担う公益財団法人文化財建造物保存技術協会の久保亮介技術主任によると、5階部分はこれまでの修理でさまざまな年代の木材が混在しているが、江戸時代のものとみられる柱が複数確認されたという。
久保さんは「まだ目視の段階だが、創建年代に近いと思わせる木材があり、今後の科学調査で創建にまつわる新たな事実が判明するかもしれない。櫓を復旧させるという第一の目標とともに、歴史的事実が得られるように慎重に作業を進めたい」と話している。
瓦や木材の取り外し、部材の清掃など解体に関する工程は全て手作業で行い、可能な限り再利用するという。2025年度までに解体を終え、新たな耐震補強の検討を含む設計、組み立てを経て、復旧完了は32年度を見込む。市は毎月第2日曜(5月は3~5日)に、素屋根内部の1階を一般公開する。熊本城の入園料が必要。予約不要。
そのほか24年度は、平櫓(国重文)の石垣の積み直しを進めるほか、田子櫓(同)など南東櫓群の解体が始まる。