もうお酒は飲みません→いますぐ考えなおして…医師が「断酒は身体に悪い」と言い切るワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

「太ってきた」「健康診断の結果が悪かった」など、さまざまな理由から「お酒を飲む機会を減らさなければ」と思っている人も多いかもしれません。しかし、『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)著者で医師の尾形哲氏は、「断酒」はキケンであるといいます。その理由と“健康的なお酒との付き合い方”について、詳しくみていきましょう。

ダイエットと同様、お酒も「急に断酒」はリバウンドのもと

出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋
漫画:松本麻希 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋
漫画:松本麻希

いきなり断酒ではなく、まず「減酒生活」から始めて

脂肪肝、肝臓の数値が悪い、肥満、高血糖、飲みすぎの自覚があるなど、さまざまな理由でお酒を控えようと思い立ったら、まずは「なぜ自分はお酒を控えたいのか」を、メモでよいので必ず書き残してください。明確な目標があることが、継続のためにとても重要だからです。

その上で、どのように実践するかですが、お酒好きな人が「今日から酒を断つ!」と言って、実際にやめられるのは、これまでダイエットに一度も失敗したことがない人だけでしょう。

むしろ、いきなりやめるのは危険です。ある日を境にお酒を1滴も飲まないと決めると、我慢の連続でストレスが積み重なります。それが何かのきっかけでひと口でもお酒を口にすれば、「もういいや!」と多量の飲酒につながりかねません。

何ごとも白か黒かの二者択一ではうまくいかないものです。グレーゾーンを設けながら進みたい方向に近づけていくのが、長続きの秘訣です。

今日から行うのは、飲酒量を減らす「減酒生活」です。1日に純アルコール量で60g以上飲んでいる人は飲みすぎなので、純アルコール20g分のお酒を減らすことが第一歩。ビールジョッキ1杯か日本酒1合分に相当します。

それができたらもう少し減らし、少しずつ飲酒量を減らしながら体のよい変化を感じましょう。同時に、週1回の休肝日を設けることもスタートしましょう。

[図表1]断酒と減酒の違い 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋

目覚めがいい、美肌になれる…「減酒」がもたらす数多のメリット

[図表2]減酒のメリット 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋

減酒生活はつらいだけではありません。肝臓の数値がよくなることはもちろん、減量効果も期待できます。また、減酒をしている人の多くが証言するのが、目覚めのよさです。飲酒で睡眠の質が下がり、目覚めが悪くなることがわかっています。

そのほか、アルコール代謝時に発生する、細胞を老化させる活性酸素を減らせるため、アンチエイジング効果も発揮。お肌の新陳代謝もよくなるので、美肌効果も期待できます。お酒が減れば、飲酒代も削減できますね。

減酒は“ハームリダクション”…アルコール依存症の治療現場でも採用

[図表3]1日当たりの飲酒量と頻度をチェック 出典:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)より抜粋

「減酒」はアルコール依存症の治療現場でも採用されています。ひと昔前までは「断酒」だけが治療の目的にされてきましたが、ひとまずお酒を減らすことで飲酒による害(=ハーム)を減らす(=リダクション)というアプローチも重要だと考えられるようになっています。

生活習慣病のリスクを減らしつつ、お酒への依存度を下げる有効な方法です。

尾形 哲
医師
一般社団法人日本NASH研究所 代表理事

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