91歳の樋口恵子さんが考える「ヨタヘロ期をどうやって過ごすかが大きな課題です」

91歳の評論家 樋口恵子さん。ヨタヨタヘロヘロの時期を過ごしているとおっしゃる樋口さんが考える、これからの課題とは? 話題の書籍『老いの地平線 91歳自信をもってボケてます』から、語っていただきましょう。
※2023年11月20日に配信した記事を再編集しています。

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ピンピンコロリは幻想

私が理事長を務める「高齢社会をよくする女性の会」の広島代表で、社会学者の春日キスヨさんが、「ピンピンしている元気な時期の後に、半分自立しているヨタヨタヘロヘロの時期があり、その後にドタリと倒れて寝たきりになる」とおっしゃいました。

まさにヨタヨタヘロヘロになりつつあった私は「これだ!」と思い、「ヨタヘロ期」と名づけて、あちこちでお話ししたり書いたりしているわけです。名付けの親は春日キスヨさんですのでここに明記いたします。

その反響から春日さんが感じるのは、皆さん、ピンピンコロリ願望が強すぎるということ。

長く終末期介護のサポートをしている春日さんから聞いた話では、「ドタリと倒れてから半年くらいをピンピンコロリとするならば、実際にピンピンコロリで亡くなる人は1割ほど」とのことでした。

つまり、多くの人はドタリと倒れた後、数カ月から年単位で寝込むことになるのです。

そして、自立して日常生活を送れる健康寿命の割合は、女性よりも男性のほうが長い。介護保険の利用理由を見てみると、女性は骨折、転倒、骨粗しょう症、この3つの事故・疾病だけで全体の3割を占めます。要するに運動機能の問題です。一方、男性はというと、全体の3割を占めるのが心臓病、脳血管症。心臓および循環器系の病気です。

言ってしまえば、男性のほうが死にやすいということ。女性のほうは、骨折したってずっと生きているわけです。

もちろん男性にもヨタヘロしながらでも元気に長く生きてほしいと思いますが、数のうえからいうと、ヨタヘロ期を長く過ごすのは圧倒的に女性です。

だからこそ、ヨタであろうとヘロであろうと、なけなしの身体的能力を振り絞ってでも運動の習慣をもったほうがいいと思います。

家の中を動ける、自分が行きたいときにトイレに行ける、それはヨタヘロ期を過ごすうえでとっても大事なことです。

ピンピンコロリは確かに理想的ですが、現実はそう簡単にはいきません。

ドタリと倒れてから、さてどうやって生き延びるか。私にとって、そしてこれからの社会にとっても大きな課題です。

樋口家欠かせないお猫さま。
書籍紹介 『老いの地平線 91歳自信をもってボケてます』
発売後すぐに重版出来、Amazon 本 日本文学 名言・箴言ランキングで一位取得、など40〜90代まで幅広く人気の話題の本。

樋口恵子著
主婦の友社刊
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老いのトップランナー・91歳の評論家 樋口恵子さんの痛快エッセイ。ボケるのが怖い人、老後の暮らしを心配している人、まだまだ夢をもって超高齢期を迎えたい人、親や祖父母世代が認知症になったらどうしようと悩む若い人、どんな世代にでも、男女差なく読んでいただきたい本です。社会学者・上野千鶴子さんとの「貧乏ばあさんの生きる道対談」、脳科学者・瀧靖之さんとの「ボケにくい!健脳対談」も収録。巻頭グラビアでは「91歳が安心して住める家実例」を紹介。
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※この記事は『老いの地平線 91歳自信をもってボケてます』樋口恵子著(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。


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