アメリカ連邦議会の上院は23日、ウクライナやイスラエル、台湾への軍事支援を含む総額953億4000万ドル約(約14兆7000億円)規模の予算案を79対18の、超党派の賛成多数で可決した。ジョー・バイデン大統領が24日にも署名し、成立する。
この緊急予算案は、数カ月に及ぶ膠着(こうちゃく)状態を経て、米下院で20日に可決されていた。
これにはウクライナへの610億ドル(約9.5兆円)規模の軍事支援が盛り込まれている。米国防総省は「数日以内に」戦争で荒廃したウクライナへの支援提供を開始できるとしている。
バイデン大統領は23日遅くに声明を発表し、「(イスラム組織)ハマスのようなテロリストや(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンのような暴君から自分たちの身を守っている我々の友人たちを支援することで、わが国と世界をより安全な場所にする重要な法律だ」とし、上院を通過したことを称賛した。
上院の与党・民主党のトップ、チャック・シューマー院内総務は、「6カ月以上にわたる懸命な努力と多くの曲折を経て、アメリカは全世界にメッセージを発信する。我々はあなた方に背を向けるつもりはないというメッセージを」と述べた。
上院は2月にも同様の支援予算案を可決していたが、ウクライナへの追加支援に反対する保守派グループが下院での採決を妨げていた。下院は野党・共和党が僅差で多数を占める。
下院の与野党議員は20日、こうした反発を回避するために協力し、対外支援に加えて、西側諸国の銀行が保有するロシア資産の差し押さえ、ロシアやイラン、中国に対する新たな制裁措置、中国企業バイトダンスが所有する動画投稿アプリ「TikTok」のアメリカでの事業売却を求めることなどを盛り込んだパッケージ法案のかたちで合意に至った。
このパッケージは、弾薬や防空システムの不足でこの数カ月間苦しんでいたウクライナ軍にとって、大きな後押しになると期待されている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「民主主義へ導く光として、自由な世界のリーダーとしてのアメリカの役割を強化するもの」だと評価した。
ウクライナ第2の都市ハルキウは23日、ドローン(無人機)やミサイルによる一連の攻撃に見舞われ、住宅街で2人が負傷したと当局は発表した。
ウクライナ国家警備隊のオレクサンドル・ピヴネンコ司令官は、ロシア軍が今後、国境に近い街への前進を試みることが予想されるとしている。
与野党から反対票
20日の下院での採決では、共和党議員の半数が反対票を投じた。
上院でも、新たなウクライナ支援に反対する共和党議員数人が反対した。
上院で反対した18人のうち15人は共和党議員、2人が民主党議員。もう1人は、イスラエルへの追加の武器供与に反対する無所属のバーニー・サンダース議員だった。
「ウクライナの財政にこれ以上資金を注ぎ込んでも、争いを長引かせ、死者を増やすだけだ」と、トミー・チューバーヴィル上院議員(共和党)は20日に述べた。
「ホワイトハウスでも国防総省でも国務省でも、この戦いでの勝利がどのようなものであるかを明確に説明できる者は1人もいない」
イスラエルのイスラエル・カッツ外相は、米議会の指導者たちの「イスラエルの安全保障に対するゆるぎないコミットメント」への感謝を述べた。
「イスラエルとアメリカは、テロとの戦い、民主主義の擁護、そして共通の価値観において、共に立ち向かう」
中国は「誤ったシグナル」と
一方、中国政府の報道官は、台湾への軍事支援について、「一つの中国の原則に対する重大な違反」であり、台湾の「独立を支持する分離主義勢力に誤ったシグナルを送る」ことになるとコメント。
「私たちはアメリカに対し、台湾をいかなる形でも武装させないことで、台湾独立を支持しないという約束を履行するための実際的な行動を取るよう求める」とした。
台湾は自らを自治権を持つ島であり、中国とは一線を画していると考えている。だが中国政府は、台湾を分離独立した省とみなしており、台湾を自国の支配下に取り戻したいと考えている。
今回可決された予算案のパッケージにはこのほか、動画投稿アプリ「TikTok」の配信を同国内で禁止できる項目も含まれている。
(英語記事 Congress clears $95bn aid package for Ukraine and Israel)