JAXA月探査機「SLIM」3回目の夜を越すことに成功 着陸成功から3か月

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年4月24日午前(日本時間・以下同様)、X(旧Twitter)の小型月着陸実証機「SLIM」プロジェクト公式アカウントにて、SLIMが着陸地点で3回目の越夜(夜を越すこと)に成功したと発表しました。【最終更新:2024年4月24日12時台】

【▲ 3回目の越夜成功後にSLIMの航法カメラで撮影された月面の様子。JAXAがXのSLIM公式アカウントを通して2024年4月24日午前に公開(Credit: JAXA)】

SLIMは2024年1月20日0時20分頃に日本の探査機として初めて月面へ軟着陸することに成功しました。ただ、2基搭載されているメインエンジンの1基で着陸直前に生じたトラブルによって想定外の速度や姿勢で接地することになったため、機体は太陽電池を西に向けて逆立ちしたような姿勢で安定しています。

着陸直後に電力を得られなかったSLIMは一旦休眠状態に置かれましたが、太陽光が西から当たって太陽電池から電力を得られるようになった2024年1月28日以降は「マルチバンド分光カメラ(MBC)」による岩の観測が行われ、着陸地点が夜を迎えることから1月31日に再び休眠状態に入りました。

【▲ 参考画像:小型月着陸実証機「SLIM」から放出された探査ロボット「LEV-2(SORA-Q)」のカメラで撮影された画像。大きく傾きつつ接地した状態のSLIMが右奥に写っている。画像は試験画像で、もう1機の探査ロボット「LEV-1」経由の試験電波データ転送により取得されたもの(Credit: JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学)】

その後は2024年2月25日に1回目の越夜に成功(3月1日未明から休眠)、3月27日には2回目の越夜に成功(3月30日未明から休眠)したことがそれぞれ確認されています。越夜後は着陸直後にシステムから切り離されたバッテリーや温度センサーの一部に不調が出始めていて、MBCによる観測も行えていないものの、状況確認と並行して航法カメラで撮影された月面の画像が公開されています。

JAXAによると、2024年4月23日夜の運用にて再起動したSLIMとの通信に成功し、3回目の越夜に成功したことが確認されました。XのSLIM公式アカウントは3回目の越夜成功後に航法カメラで撮影された画像(記事冒頭に掲載)をポストしています。越夜後に撮影された画像は1回目と2回目の時にも公開されていますが、今回は越夜後としては最も月齢が早い時に撮影されたため全体的に明るく、岩などの影が短くなっています。

【▲ 参考画像:2回目の越夜成功後にSLIMの航法カメラで撮影された月面の様子(無圧縮データ)。3回目の越夜成功後に撮影・公開された画像と比べて全体的に暗く、岩から伸びた影も長いことがわかる。JAXAがXのSLIM公式アカウントを通して2024年3月29日に公開(Credit: JAXA)】

設計時に越夜を想定していなかったSLIMですが、JAXAによると3回目の越夜成功後も主要機能は維持されている模様です。今後は昼夜の温度差が大きな月面の環境で劣化が進む箇所と進みにくい箇所を明らかにするべく、SLIMの状態を詳しく確認していくということです。

SLIMについては新しい情報が発表され次第お伝えします。

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文/sorae編集部 速報班 編集/sorae編集部

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