武雄市の伝統工芸品「西川登竹細工」技術の継承が課題 大阪から移住して腕を磨く女性に密着【佐賀県】

農業用や漁業用などの「かご」や「ざる」として昔から親しまれている武雄市の伝統工芸品「西川登竹細工」。後継者がおらず技術の継承が課題となっています。伝統を途絶えさせないために後継者候補として奮闘する女性を取材しました。

【新道友月さん】
「自然に関わる仕事を選んでよかったと思うし、だからこそもっと知ってほしい」

削った細い竹ひごのしなりを利用して編み込む「西川登竹細工」竹だけで頑丈に作り上げるのが特徴の県の伝統的地場産品です。

【栗山商店 栗山勝雄さん】
「丈夫さが一番。重たいもの入れたりするんで、長持ちしないといけない」

武雄市西川登町にある栗山商店。竹の伐採から材料の加工、そして西川登竹細工の製造・販売全てを手がけています。伝統を受け継ぐ唯一の事業者です。
明治初期から農家の副業として始まった西川登竹細工。製品は炭鉱で使用され、戦後の西川登は500人以上の職人が働く竹細工の産地でした。しかし、1950年代に入り家具や農具などにプラスチックが使用されるようになると徐々に需要が減り職人も少なくなっていきました。そして店はついに栗山夫妻の1軒だけに。

【栗山商店 栗山勝雄さん】
「もう多分私たち(夫婦)が2人でこそこそしながら作って、もうそれで終わりだと思っていたから、夢にも思っていなかった」

そんな西川登竹細工のまちにやってきたのが、新道友月さん大阪府出身の25歳です。もともとものづくりが好きで、大学では伝統工芸の中でも竹細工を専攻していた新道さん。

【新道友月さん】
「自分の言葉で海外に伝統工芸品を広めたいと思ったのが一番最初」

おととし県が後継者の発掘・育成を目的に開いたインターンシップに参加し、西川登竹細工と出会いました。卒業後の去年5月からは武雄市に移住して栗山夫妻のもとで腕を磨いています。

【新道友月さん】
Q栗山夫妻のすごいところは?「早い。スピード。作業スピードが本当に早い。かごのがっちりさ、頑丈さはとてつもなかったので、ビックリした」

西川登竹細工は何十年も使い続けることができ、使っていくうちに色合いが変わっていくことも特徴の一つです。そのなかでも「米とぎざる」は足をつけたアイデア商品。常に品薄状態になるほど人気でとにかく数が必要です。

【新道友月さん】
「やっぱり売れる瞬間はすごく、感無量というか。それを求めている人がいるなら、それを作り続けるしかないよなと今は思っている」

この日も買い求める客の姿が。

【客】
「家にはある。たぶん、おばあちゃんが。近頃になってこれがいいなと思いだした」
【新道友月さん】
「壊れたら言ってくださいね」
【客】
「すぐ言うね」

移住してもうすぐ1年。

【栗山商店 栗山勝雄さん】
「いろいろ勉強になるし、みんなで一緒にやるので楽しいし」
【妻・イツ子さん】
「若い子が一人入るだけで全然雰囲気違うから、お年寄りだけでするのとは」

今年1月にはドイツで開かれた展示会に参加。西川登竹細工の初めての海外進出です。新道さんは現地の人たちに直接魅力を伝えるなど活躍の幅を広げています。
県内では、販売会はもちろんワークショップも積極的に開催しています。

【ワークショップ参加者】
「竹のすばらしさを改めて感じた。何も留めてないのにきちんと留まっていて」

伝統を残すために取り組んでいることはほかにもあります。材料となる“竹”の確保です。

【新道友月さん】
「だいたい3、4年目くらいの竹を選んでいる感じ」

【栗山商店 栗山勝雄さん】
「竹を切ってくれる人」
【妻・イツ子さん】
「切子さん」
【栗山商店 栗山勝雄さん】
「切子さんがどこもいなくなって」

製造のかたわら自分たちで荒れた竹林を整備し、製品に適した竹を求めて汗を流します。今後は西川登竹細工の魅力を世界にも発信していきたいという新道さん。その伝統をこれからも残すために奮闘は続きます。

【栗山商店 栗山勝雄さん】
「少しでも職人さんを増やして、竹細工に興味を持ってくれるお客さんが増えていってくれれば一番いいかな、そのために先導役として頑張ってもらいたい」
【新道友月さん】
「出会いもそうだし、本当に恵まれている。伝承していくためのリーダー的な存在に自分がなればいいかな」

栗山商店では大型連休中の4月28日から5月5日に、毎年恒例の軒先販売を行う予定です。

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