電車内で泥酔した男性が閉まるドアを何度も妨害…。遅延が発生しかなり困ったのですが、この場合賠償請求はできるでしょうか?

損害賠償請求とは?

損害賠償請求は、自分以外の人の法令違反や約束違反が原因でかぶった損失に対し、賠償を求める法律上の手続きを指します。この請求は、主に民法に基づき、人の身体や財産、心理状態にかぶった損害を対象とします。

例えば、他者の過失によりけがを負った場合、治療にかかった費用や、仕事を休んだことによる収入の損失を穴埋めするために損害賠償を請求できるのです。また、パートナーの不貞行為が離婚の原因となった場合、精神的苦痛に対する慰謝料を求めることも可能です。

具体的な事例として、交通事故に遭遇し、3ヶ月間の入院とリハビリが必要だった場合を考えてみましょう。この期間中の治療費が200万円、通院費が5万円、そして仕事を休んだことによる収入損失が100万円であったとします。これらの費用と損失は具体的な損害として計算できるため、損害賠償請求の対象となります。

なお、損害賠償請求には、物質的な損害だけでなく、心理的な苦痛に対する補償も含まれます。ただし、請求されたすべての損害が賠償されるわけではなく、所定の要件を満たさなければ成立しません。

損害賠償が認められる要件

損害賠償請求を成立させるためには、実際に損害が発生したこと、その損害が相手の行動によるものであること、およびその行動に法的な非があることの証明が要求されます。損害の種類には、積極損害と消極損害があり、両者を理解することが重要です。

・積極損害
相手方の不当な行為によって直接的に必要となった費用や支出を指します。例えば、交通事故に遭ったことによる医療費や、壊れた車両の修理費用がこれに該当します。車両の修理に30万円、治療費に20万円かかった場合、これらは積極損害として請求可能です。

・消極損害
不法行為によって得られなくなった利益のことです。これには、事故によって仕事を休まざるを得なくなったことによる収入損失が含まれます。仮に事故後1ヶ月間働けず、その期間の収入が失われたとすると、その収入損失額が消極損害として請求できます。

さらに、法的に損害賠償を請求するためには、相手の行為が違法であること、つまり法律に反することや社会的責任を怠ったことが明確でなければなりません。この場合、相手の故意や過失が重要な要素となります。例として、相手が交通規則を守らずに事故を引き起こした場合、その違法行為により損害が生じたと認定されれば、相手に賠償責任が生じます。

このように、損害賠償請求には、具体的な損害の証明、その損害と相手の行為との因果関係、および相手の法的責任の明確化が必要です。これらの条件を満たすことで、法的に損害の補償を求めることが可能になります。

電車の遅延を起こした相手に損害賠償請求できるか?

電車のドアが閉まることを妨害したことによる電車の遅延に対して、妨害した男性に損害を賠償請求することは、一般的には成立が難しい案件でしょう。遅延による遅刻で懲戒処分となり減給になるなどの具体的かつ客観的な損害の証明があれば請求は可能ですが、「かなり困った」程度では不十分な可能性が高いです。

また、遅延を引き起こした個人に対して直接的な損害賠償を求めることは、法的なプロセスとしての複雑さや、その実行可能性の点で問題があります。

損害賠償請求は簡単ではない?

電車の遅延による損害賠償請求は、難しいと考えられます。遅延による具体的な損害の証明、遅延の原因となった行為との因果関係の明確化、法的プロセスの複雑さなど、多くの障壁が存在するからです。このような状況について、どうしても納得がいかなければ、弁護士にアドバイスを求めて解決策を探るとよいでしょう。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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