山下智久主演『ブルーモーメント』の“コード・ブルー感”は最適解 “チーム要素”が鍵を握る?

4月24日にスタートしたフジテレビ系ドラマ『ブルーモーメント』。山下智久が主演を務め、タイトルに“ブルー”が入り、人の命を救うために奔走する物語となれば、どうしたって『コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系)が思い浮かんでしまう。しかし山下にとってまさにそれ以来のフジテレビ系連ドラとなる本作は、医療ドラマではなく、気象災害の最前線で人命救助を行うエキスパートたちの物語。山下が演じるのは、ドクターではなく気象研究所の研究官という役どころだ。

第1話の物語は、気象庁気象研究所の東京支部に雲田彩(出口夏希)が派遣としてやってくるところから始まる。自然災害に立ち向かうために内閣府直属の組織として設置された特別災害対策本部(SDM)。その気象統括責任者である晴原柑九朗(山下智久)の助手として採用された雲田だが、早速辛辣な態度の晴原に反発。そんな折、福島県の山中で雪崩が発生し4名が巻き込まれ、6名が遭難しているとの通報が。雲田は晴原と、SDMの消防班である佐竹尚人(音尾琢真)、園部優吾(水上恒司)と共に現地に向かうことになる。

原作は小沢かなの手掛けた同名マンガ。気象研究所の研究官である荒木健太郎が監修を務めたこともあり、身近でありながらもあまり事細かに知る機会がなかった気象に関する必要な知識がストーリーテリングのなかに器用に落とし込まれ、かつ親しみやすいキャラクターデザインも伴って、非常に興味深い作品である。これがドラマとして、どのように脚色されているのか。番宣の段階ではかなり“コード・ブルー感”の強い作風になるのではという予感がしていたが、第1話を観た印象としては、この“コード・ブルー感”が本作を映像化するうえで想像以上の最適解であったと感じずにいられない。

“人智を超えた力をもって不条理に人の命を奪う”。劇中でそのように表現される自然災害の恐ろしさを映像として見せつけるためには、どうしたってそのスケール感は必要不可欠なものとなる。災害現場である雪山に到着した捜索隊の前に広がる生々しい雪崩の爪痕。この物語に欠かすことのできない“ブルーモーメント”の深い青色に包まれた空で表現される、ほんの一瞬しかない奇跡的な穏やかさと、残酷であり刻一刻と人の命を奪おうとしていく雪原の白さとのコントラスト。もはやこの視覚的な作り込みは、劇場版を視野に入れているのではないだろうかと思ってしまうほどだ。

原作では物語の導入となる気象災害は、線状降水帯による河川の氾濫であった。そのエピソードの要素をいくらか織り込みながら、それを雪崩へと変化させている。そこには青さと白さの対比もあるだろうし、同様の災害が晴原の婚約者である灯(本田翼)が命を落とすことになった過去のシークエンスですでに描かれていたことも理由にあるだろう。そして同時に、現実世界でも近年多発している気象災害、自然災害というものは、あらゆるシチュエーションで起こりうるということを提示しているかのようでもある。

もうひとつ“コード・ブルー感”を高めているのは、やはり“チーム”という要素であろう。各々の人物については今後のエピソードで触れていくことになるだろうが、原作では晴原と雲田のバディとしての関係性が、このドラマではチームの結束という部分へと拡張されている。しかもそれぞれにきちんと何らかのバックグラウンドが与えられていることも第1話から明白だ。とりわけ象徴的に映ったのは、雲田が「天気予報は人の命を救うためにある」という解にたどり着いたことで晴原に認められるのではなく、SDMの一員としてチームのジャンパーをまとったということだ。その一瞬で、この物語の拡がりが大いに期待できる。

(文=久保田和馬)

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