【天皇賞(春)】狙いは「芝長距離の主流血統を持つ軽量馬」 有力馬ではブローザホーンに注目

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傾向解説

芝3200mという日本競馬の最長距離GⅠ・天皇賞(春)。マイラーや中距離馬の参戦が多い菊花賞よりも本質的なスタミナが求められる古馬GⅠでありながら、ハイレベルな中距離路線でも戦える地力の高さも求められる一戦です。本記事では血統面を中心に、天皇賞(春)のレース傾向を整理していきます。

まず抑えておきたいのは軽量馬の方が距離適性が高い傾向にあるということ。これは天皇賞(春)に限らず、芝3000m以上で行われるような超長距離戦で共通する傾向です。2010年以降に行われた芝3000m以上のレースでは牡馬やセン馬で馬体重459kg以下の組は成績が非常に良く、これは重量馬の好走率が高いスプリント戦とは真逆の傾向です。

キタサンブラックのようにフレームが大きいがために馬体重が500kg以上になる馬もいますが、全体の傾向としては無駄肉の少ない軽量馬の方が超長距離戦に向く可能性が高いといえるでしょう。

<芝3000m以上での馬体重別成績(牡/セン馬・単勝29.9倍以下、2010年以降)>
~459kg【16-13-12-53】勝率17.0%/連対率30.9%/複勝率43.6%/単回収率115%/複回収率106%
460~479kg【23-25-14-89】勝率15.2%/連対率31.8%/複勝率41.1%/単回収率77%/複回収率99%
480~499kg【23-24-21-158】勝率10.2%/連対率20.8%/複勝率30.1%/単回収率70%/複回収率77%
500~519kg【18-15-13-95】勝率12.8%/連対率23.4%/複勝率32.6%/単回収率79%/複回収率83%
520kg~【7-5-7-55】勝率9.5%/連対率16.2%/複勝率25.7%/単回収率142%/複回収率72%

血統面ではステイゴールド、ディープインパクト→キズナ、ハーツクライという芝長距離路線をけん引する血統に注目。過去10年の京都開催時には上記4頭とキタサンブラックを出したブラックタイド(ディープインパクトの全兄)が連対圏内を独占しており、そのなかでも軽量馬の成績は非常に優秀。芝長距離の主流血統の軽量馬を狙うのが超長距離戦でのセオリーといえるでしょう。

<父別成績>
ディープインパクト【3-1-1-20】勝率12.0%/連対率16.0%/複勝率20.0%/単回収率36%/複回収率34%
ステイゴールド【3-1-1-8】勝率23.1%/連対率30.8%/複勝率38.5%/単回収率170%/複回収率170%
ブラックタイド【2-0-0-0】勝率100.0%/連対率100.0%/複勝率100.0%/単回収率335%/複回収率140%
ハーツクライ【0-5-2-13】勝率0.0%/連対率25.0%/複勝率35.0%/単回収率0%/複回収率169%
キズナ【0-1-0-0】勝率0.0%/連対率100.0%/複勝率100.0%/単回収率0%/複回収率370%
オルフェーヴル【0-0-1-4】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率20.0%/単回収率0%/複回収率80%
ディープスカイ【0-0-1-2】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率33.3%/単回収率0%/複回収率80%
マーベラスサンデー【0-0-1-1】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率50.0%/単回収率0%/複回収率735%
トーセンホマレボシ【0-0-1-0】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率100.0%/単回収率0%/複回収率290%

また、菊花賞で2着2回3着1回という成績のエピファネイア産駒も要注目。天皇賞(春)でもたった1頭の出走馬である21年のアリストテレスが4着と善戦しており、長距離戦や距離延長での成績から今後の芝長距離路線をけん引する種牡馬になる可能性もあります。

<芝3000m以上でのエピファネイア産駒(単勝29.9倍以下)>
該当馬【0-2-2-6】勝率0.0%/連対率20.0%/複勝率40.0%/単回収率0%/複回収率120%

血統解説

ドゥレッツァ
母モアザンセイクリッドは2013年ニュージーランドオークス馬。本馬は父にキングカメハメハ系ドゥラメンテを配した芝中長距離馬で、馬体重470kg台の比較的小柄な馬体でもあります。キングカメハメハ系は京都開催での天皇賞(春)では3着すらありませんが、タイトルホルダーと同程度の馬体重で菊花賞を制していることから、超長距離適性を疑う必要はないでしょう。

タスティエーラ
母母フォルテピアノはダ1400m以下で3勝、母パルティトゥーラは芝1600mで3勝を挙げたスピード豊かな一族。仕上がりに時間がかかるサトノクラウン産駒でありながら日本ダービーに間に合ったのは、まさに牝系の早熟性とスピードがあってこそです。ただ、本質は芝中距離馬でピュアステイヤーが集結する天皇賞(春)では菊花賞のように誤魔化しが利かないかもしれません。

ブローザホーン
母オートクレールはデュランダル×フォーティナイナーのスピードタイプで、現役時代には1600m以下で4勝を挙げた活躍馬。ただ、エピファネイアを父に配した本馬は馬体重420kg台の小柄な馬体で、スレンダーな体つきからも超長距離適性は相当高いとみています。日経新春杯が旧厩舎の解散直前のレースだったことから、転厩緒戦の阪神大賞典は大目に見たいところ。人気落ちの今回は馬券妙味十分の1頭です。

ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。



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