福島県内33市町村「消滅可能性」 若年女性の流出対策急務

 民間有識者らでつくる「人口戦略会議」は24日、浜通りの13市町村を除く福島県内46市町村のうち、約7割に当たる33市町村が将来的に「消滅可能性」があるとの報告書を公表した。2020年から50年までの30年間で、出産の中心となる20~30代の女性が5割以上減ると推計される市町村について、人口減に歯止めがかからなくなるとして対策の充実を求めた。県内は残る13市町村も減少率が3割を超えており、全県的な対策が急務となっている。

 国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が昨年12月に公表した地域別将来人口推計を基に独自に推計した。自治体の消滅可能性を巡っては、14年に民間組織「日本創成会議」が報告書を公表しているが、県内市町村は東京電力福島第1原発事故の影響で対象から外れており、消滅可能性が示されたのは今回が初めて。原発事故の影響が残る浜通りは、市町村単位の推計は示さなかった。

 今回示された消滅可能性がある自治体には、対象となった県内10市のうち福島、郡山、須賀川、本宮を除く6市が含まれ、比較的人口の多い市部でも若年女性の流出が課題になっていることが改めて浮き彫りとなった。また人口減が急速に進んでいる会津では、17市町村のうち13市町村で将来的な消滅の可能性が示された。

 市町村別の減少率は、川俣町の78.1%が最も大きく、減少率が7割を超えたのは平田村(75.7%)、鮫川村(74.1%)など8町村に上った。一方、減少率が最も小さかったのは大玉村の30.0%で、西郷村(32.1%)、矢吹町(34.0%)と都市部に近く交通の便の良い中通りで目立った。

 社人研の将来人口推計によると、県内人口は50年に124万7千人となり、20年(183万3千人)から3割以上減少すると試算されている。県はこうした推計を受け、年内にも40年の人口目標を「150万人程度」としている人口ビジョンを見直す計画だ。

 報告書では、消滅可能性が指摘された県内市町村の多くについて、自然減、社会減の両方で地域の特性に応じた対策が必要と指摘した。

 報告書の公表を受けてコメントを発表した内堀雅雄知事は「本県が直面する若者の県外流出や出生数低下という現状に対し、改めて警鐘を鳴らすもの」とした上で、若者の県外流出防止など自然減と社会減の両面から人口減対策を進めていく考えを改めて示した。

 ■消滅可能性自治体 有識者らでつくる「日本創成会議」(座長・増田寛也日本郵政社長)が2014年5月に公表した報告書で、独自に定義した。消滅は人口減少に歯止めがかからず、自治体運営ができなくなる状態を指す。対象896自治体のリストを公表したことで人口減少対策の機運が高まり、政府は東京一極集中の是正を目指す「地方創生」を始めた。

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