【4月25日付編集日記】初任給

 古典落語の「藪(やぶ)入り」は明治時代、商家に住み込みで働く奉公人が休みをもらい、初めて実家に帰省する話だ。「何を食わそうか」「どこへ連れていこう」と前日から息子の帰りを待つ両親のやりとりが、ほほ笑ましい

 ▼立派に成長した姿を喜んでいると、母親が息子の財布から15円もの大金を見つけてしまう。まだ幼い奉公人はもちろん無給。父親は「盗みでもしやがったか」と息子を叱りつける。当時の15円は今なら30万円ほど。両親が驚くのも当然だ

 ▼きょうが新年度最初の給料日という企業も多いだろう。4月25日は「初任給の日」。社会人になって初めて現金を受け取ったり、明細を見たりした時の気持ちは誰しも忘れがたい。キャッシュレスの現代は、紙の明細も消えつつあるようだ

 ▼賃上げの一環で今春、大幅に初任給を引き上げた企業もある。初任給の使い道を尋ねた民間の調査では、貯金や趣味、両親との食事や贈り物に充てる若者が多い

 ▼ちなみに奉公人の15円はネズミ駆除で得たお金。預かっていた店の主人から「故郷の親を喜ばせな」と渡されていた。新社会人の皆さん、初任給は人生で一度きり。家族を驚かせる額であろうとなかろうと、大事に使ってください。

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