【漫画】Xで16万いいねの大バズり! SNS漫画『聞き取りが苦手すぎる男子の日常』が愛おしい

「聞き取り困難症(LiD)」や「聴覚情報処理障害(APD)」という言葉に聞き覚えがあるだろうか。聴力は正常だが、言葉の聞き取りや意味の理解に困難が生じる症状をさす言葉である。SNS漫画『聞き取りが苦手すぎる男子の日常』は、それを抱える主人公と友人たちとの様子を描いて16万いいねを集めた。

作者は雨桜あまおうさん(@amaousansan)。この世界観はどのように着想され、大きなバズを生んだ理由をどう思うかなど、彼女へのインタビューを通して本作の秘密に迫っていきたい。(小池直也)

――バズを起こした理由をどう分析されていますか?

雨桜あまおう(以下、雨桜):想像した以上に反響をいただき驚きました。聞き取りの良し悪しは「ゼロか百か」で分けられるものではなく、「良好な人から、普通の人、ちょっと困っている人から、非常に困難のある人」まで、グラデーションになっているのでしょう。

あくまで私見ではありますが、そのように感じています。そういうものだからこそ、広く、多くの方々から共感を得たのだろうと考えております。

――「聞き取り困難症(LiD)/聴覚情報処理障害(APD)」をテーマにしたのはなぜでしょう?

雨桜:私自身もどちらかというと、聞き取る力が高くない人間でして。これまでも日常や仕事などの色々な場面で失敗をしてきました……(笑)。

そんな下地があるなか、先日たまたま出先で声優さんのクリアなナレーションを聞いたことで、「描くか」という気持ちがフッと湧いてきて。それが制作のきっかけです。

――聞こえない言葉をフォントで表現した点も印象的です。

雨桜:主人公キャラクターの聞き取りづらさをフォントで再現することで、読者も追体験できるような仕組みにしたかったんです。

イメージに合うフォントを仮置きし、何度か変更と修正を重ねました。作画よりも写植の修正の方が多かったですね。作画に関しては「もうええか!」と投げ出して投稿した感じです(笑)。どこかにミスがありそうで恐ろしいですが……。

――キャラクターのモデルはいますか?

雨桜:私は漫画を描く際に、キャラデザインに特定のモデルを設定しません。今までの人生の中で見たり聞いたり会ったりした、全ての人々をごった煮にしてキャラクターを作っています。

またストーリーの作り方も同じような感じでして。自分の人生、他人の人生、世間で起きていること、空想や感情など、こちらも全てのごった煮の中からすくい上げていく感覚ですね。なのでキャラもストーリーも「世間のキメラ」と呼べるかなと(笑)。

――本作で力を入れた点は?

雨桜:漫画全体を通して力を入れたのは写植です。読みにくい部分と読める部分、2種類のフォントの使い分けとバランスは何度も見直して修正しました。「ところどころ読みにくいけど、ストーリーを把握するには問題ない」という塩梅で写植をしないと、読者を置き去りにしてしまうので……。

「登場人物のセリフが読みにくいのに、全体のストーリーはすんなりと追える」という漫画に仕上がっていたら幸いです。

――今後の展望についてもお願いします。

雨桜:大それた夢などは、まるでありませんが…とにかく、ひたすらこつこつと漫画を描き続けていけたらと思います。作画作業が好きなので、これからも粛々とペンを握っていきたく思います。

(小池直也)

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