鈴木長崎市政1年 相次ぐ「再検討」 新文化施設、平和公園スポーツ施設… 具体的な判断時期を

新たな文化施設の建設地に決まった桜町の市庁舎跡地(中央下)。解体が進んでいる。写真奥が長崎駅方面

 長崎市の鈴木史朗市長は26日で就任1年を迎える。この間、新たな文化施設の建設地や、平和公園スポーツ施設の移転・存続問題などを巡り、相次いで「再検討」を打ちだした。議論の深化か、それとも事業の停滞か-。16年ぶりに昨春誕生した県都のリーダーの現状と課題を、関係者の視点から検証する。
 鈴木氏が昨年6月に大きな“ブレーキ”をかけたのが、新たな文化施設の整備事業。廃止した市公会堂の代替として市庁舎跡地(桜町)に建てる計画をいったん止め、まちづくりに資するかどうかを含め再考すると表明した。
 市文化振興審議会の堀内伊吹会長は「設計直前で戸惑った」と明かす。既に施設の中身の議論を進めていた音楽や演劇などの各委員にも不安が広がった。
 再検討過程では、市中心部の将来像を検討する別組織と初めて合同で議論。この「副産物」として、堀内氏は「文化施設を音楽や芸術の鑑賞だけでなく、日常的に人が集まって会話し、未来をつくる場にすべきだと再確認できた」と認める。
 ただ建設地は1周回って市庁舎跡地に戻り、完成時期は当初の2026年度から遅れる。一方で練習や発表の場は不足し、市外に場所を求める団体も。堀内氏は「市長が言う『スピード感』を実行してほしい」として、市長直轄で部署横断の「特別推進チーム」をつくるよう提言する。
     
 平和公園内を通る道路整備計画に伴い、市民総合プールを陸上競技場へ移転する計画にも待ったをかけた。競技場の存続を求める市民運動などを受け、計画賛成・反対の両者を含めた「再検討部会」を設置した。

平和公園西地区の市民総合プール(中央左)と、隣接する陸上競技場(同右)=2021年2月、岩屋山から

 「市民の声を聞く気がある」。存続を求める団体を発足した佐藤悟氏は当初、そう評価した。だが市は再検討の中で、経済性や交通利便性を踏まえプール移転先は「陸上競技場が適当」と元の案を示し、今も議論が続く。佐藤氏は「競技場への移転が前提の『誘導』のようで納得できない。単に『プールか競技場か』の争いにせず、多様で自由に公園を使う市民の声をもっと聞いて」と注文する。
 観光分野の代表として再検討部会に加わる村木昭一郎委員は「時間」の重要性を強調。市民の声を重視する考えは理解する半面、議論が平行線をたどり道路建設が遅れることは避けるべきだとして「プールと競技場の関係者が(機能面などで)譲り合い、歩み寄る場にすべき」と指摘。「結論が一つになるか不透明で、選択肢を複数示す可能性もある。その時の市長の決断は待ったなしだ」
 文化施設とスポーツ施設のいずれも、鈴木氏は市の判断を示す時期を明らかにしていない。市議会の毎熊政直議長が、2年目の鈴木市政に求めることは「前進」だ。「1年目は検討でもよかったが、今からはそうはいかない。すぐやること、年内にやること、任期中にやることを具体的に公表すべきだ。ただ逆に言えば、目標を決める分だけ責任は重くなる」とくぎを刺す。

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