まもなく配信! Netflix映画「シティーハンター」視聴前に見どころとメディアミックス化を振り返る獠と香が相棒になるまでの“はじまりの物語”の描き方の違いに注目

by 戸津 弘貴

【Netflix「シティーハンター」】

4月25日 配信開始

「シティーハンター(集英社、コアミックス)」は、1985年13号から1991年50号にかけて「週刊少年ジャンプ」にて連載された北条司氏による作品だ。同氏の作品「キャッツ♥アイ」に続く2作目の連載で、ジャンプコミックスより全35巻が発売された。累計発行部数は5,000万部を超え、40年近く経った今でも新たに映画化や舞台化される人気作品だ。

シティーハンター文庫版第1巻。「はじまりの物語」が描かれている

1987年にTVアニメ化されて以来、4シリーズ(とスペシャル)が放送されたほか、2024年までに5本のアニメ映画が作られている。香港とフランスで公認の実写映画も作られたが、この度満を持して日本初の実写化となる映画「シティーハンター」がNetflixにて配信される。今回は、4月25日に配信をひかえる「シティーハンター」を振り返りたい。

シティーハンターとはどんな作品?

ご存知の方も多いと思うが、まず最初に原作となるマンガ「シティーハンター」を簡単に紹介したい。

物語は、新宿を拠点にボディーガードやトラブル解決などを請け負うスイーパー(掃除人)をしているシティーハンターこと冴羽獠(さえば りょう)が、パートナーの香(かおり)と一緒に依頼人の美女(たまに少女や男性もいるが)たちの抱える問題を解決していくというものだ。最初の頃は香の兄、槇村秀幸とタッグを組んでいたが、「ある事件」で敵対組織に殺されたことをきっかけに、妹の香が兄の代わりとなったという経緯がある。

主な登場人物には、シティーハンターである冴羽獠と、パートナーの槇村兄妹、警視庁の美人刑事、野上冴子のほか、ライバルの海坊主(ファルコン)などが有名だ。ゲストで登場した依頼者がサブキャラクターとして定着(関係人物として再び登場)する場合もある。コミックスやアニメシリーズでは、香の兄槇村秀幸と冴子が元同僚だったなどの関係性も示された上で、微妙な距離感を保つために(?)お約束のやりとりを繰り返している。

物語の中心となる獠と香(画像はコアミックス版のコミックス表紙)
ライバルの海坊主(ファルコン)はスピンオフコミック「CITY HUNTER外伝 伊集院隼人氏の平穏ならぬ日常」も発売されている

主人公の冴羽獠は、女好きで三枚目な面もありながら、クールでハードボイルドな面も併せ持ち、依頼人やパートナーを守る頼もしさ、立ちはだかる敵を倒す強さも持っている。そんな3枚目と2枚目のギャップに男性だけでなく女性からも人気が高かった。

同じ場所に銃弾を撃ち込んだり、正確に相手の銃だけを撃ち落とすなど、射撃の腕も超一流で、冴羽獠の愛銃「コルトパイソン」のモデルガンは今でも人気アイテムだ。

タナカワークスから発売されている「コルト パイソン Rモデル4インチ」。同社からは、シティーハンターとコラボしたスペシャルバージョンも発売されている
時おりコルトパイソンを片手に獠になりきって「シティーハンター」の世界観にひたってみたくなる

Netflix映画「シティーハンター」では、主人公のシティーハンター冴羽獠を鈴木亮平さん、ヒロインの槇村香を森田望智さんが演じる。香の兄で相棒の槇村秀幸役に安藤政信さん、警視庁の敏腕刑事・野上冴子役に木村文乃さんと豪華なキャスティングだ。

予告編やNetflixのページでは、「獠と香が相棒になるまでを描く"はじまりの物語”」であると示されている。

コミックスでは物語序盤に新型麻薬「エンジェル・ダスト」をひろめようとする犯罪組織「ユニオン・テオーペ」に目をつけられ、獠の相棒で、香の兄、槇村秀幸が殺されてしまう。その後も物語の中では度々「エンジェル・ダスト」や「ユニオン・テオーペ」が登場し、後半ではユニオン・テオーペ首班”長老(メイヨール)”である海原と対決する。

今回の映画では、「エンジェルダスト」をめぐって事件が起こり、槇村秀幸が死んでしまうことが窺える。鈴木亮平さんへのインタビュー動画でも、あのシーンは原作の通りにびしょ濡れの状態で演じたかったとある通り、読者ならすぐさま“あのシーン”を思い起こす。

当時と時代も変わって「そのまま再現しただけでは違和感のある」シチュエーションのアレンジ、「原作のイメージそのまま」の描かれ方など、予告編だけ見る限りでは史上最高の出来栄えなのでは? と期待が高まる。シリアスなパートはもちろん、アクションシーンも見応えがありそうだし、コミカルなシーンは鈴木亮平さんが主演を務めた実写映画「HK/変態仮面」を彷彿とさせる体当たり演技でこちらも爆笑間違いなしだろう。

「シティーハンター」の実写映画といえば、2019年には、「シティーハンター THE MOVIE史上最香のミッション」がフランスで制作され、日本でも2019年11月に上映、のちに配信されて好評を博した。当時は「これぞシティーハンター」とか「実写で完全再現!」など絶賛されたのも記憶に新しい。

メディアミックスとしては同じく2019年2月にアニメ映画「劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ」も公開された。続けて2023年にはアニメ映画「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」が公開され、そのDVD&BDが今夏発売となる。

「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」では、アニメでは今まで描かれてこなかった「エンジェル・ダスト」や「ユニオン・テオーペ」が登場し、物語としての決着が描かれた。昭和に始まり、平成を過ぎ、令和になって「はじまりの物語」と「おわりの物語」が作られるというのも感慨深い。

今なお様々な展開を見せる「シティーハンター」

さて、「シティーハンター」といえば、アニメや映画で使用された楽曲にも注目したい。代表的な楽曲はなんと言ってもGet Wildだろう。「シティーハンター」といえばGet Wildと言っても良いくらいこの曲がかかるとクライマックス! という感じもする。また、エンディングテーマとしてのイメージも強く、イントロのかかり方がカッコ良いとなにかと話題になった。なお、長年愛され続けたことで、2023年より4月8日をオリジナル版の発売日に合わせ「Get Wildの日」とすることが一般社団法人 日本記念日協会によって正式に認定されるまでになった。

今回も、映画「シティーハンター」のエンディングテーマに、“Get Wild”新録音版「Get Wild Continual(ゲット ワイルド コンティニュアル)」が採用された。今回の舞台が「令和の新宿」であることを受け、オリジナルのエッセンスを活かしてのアップデート(進化)をコンセプトに制作されたという。実際に聴いてみると、オリジナルバージョンよりもテンポやキーが高く、アレンジも今風に仕上がっていつつも、TM NETWORKらしさは失われていないように感じられた。予告編でも使用されており、イントロのかかり方にグッときてしまう。

Get Wildがあまりにも有名で、それ以外の楽曲のことが触れられないが、「シティーハンター」に使用された楽曲は名曲揃いだ。オープニングテーマである小比類巻かほるの「City Hunter?愛よ消えないで?」ほか、PSY・Sや岡村靖幸、小室哲哉など錚々たるアーティストが参加している。

「シティーハンター」のちょっと大人な雰囲気の内容に、当時の最新J-POPがよく似合っており、人気を支える一因でもあったと思う。

TM NETWORKも、Get Wild以外に「STILL LOVE HER (失われた風景)」がエンディングテーマとして使われたり(第2シリーズ、後半)、「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」でもオープニングテーマや挿入歌を担当している。個人的には「STILL LOVE HER (失われた風景)」が好きだっが、「Get Wild」がここまで定着すると、次のバージョンや新しい映像作品を期待してしまう。

40年近くたった今でも色褪せない魅力に満ちた「シティーハンター」。先日、別件の取材で小倉市を訪れた際にも、北条司氏の出身地であるということで小倉駅の連絡通路に夜景ポイントを紹介する壁画を見ることができた。

今回のNetflix映画「シティーハンター」も非常に楽しみだ。コミックスに関しても映画を見る前にもう一度読み返すもよし、映画を観た後であたらめて読んでみるのも良いだろう。

小倉駅にある連絡通路の壁画

(C)北条司/コアミックス 1985

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