中国ネット文学、海外進出で文化交流の懸け橋に

中国ネット文学、海外進出で文化交流の懸け橋に

 上海で取材をする海外のネット文学作家。(2023年12月7日撮影、上海=新華社配信)

 【新華社天津4月25日】中国のネット小説家「風月」さんは、日本の読者から手紙をもらったことがある。ファンタジー小説「天啓予報」を読んだ女性読者からで、中国語で次のような感想が書かれていた。

 「天啓予報は私が初めて読んだ中国のネット文学でした。以前から中国の古典文学や現代文学が好きで、偶然見つけて読み始めました。文章が美しく、リズム感もあり、時間を忘れて読みふけりました」。自分で翻訳して友人にも読んでもらったとも記されていた。

 日本は現在、中国ネット文学最大の海外市場の一つで、多くの作品が日本語に翻訳され、読者の好評を得ている。中国社会科学院文学研究所が2月に発表した「2023中国ネット文学発展研究報告」によると、海外市場の規模は23年に40億元(1元=約21円)を超え、海外からのアクセスは200カ国・地域以上の2億3千万人近くとなった。

 天津市社会学学会の張宝義(ちょう・ほうぎ)会長は、中国のネット文学がここ数年、海外での影響力を徐々に高めていると説明。世界が中国を読み解くための「時代の窓」であり、文明間の交流と相互学習を進める「デジタルの懸け橋」にもなっていると語った。

中国ネット文学、海外進出で文化交流の懸け橋に

 閲文集団が世界のネット文学作家を招いて開いた第2回上海国際ネット文学ウイーク中外作家円卓会議。(2023年12月6日撮影、上海=新華社配信)

 「天啓:血術士征服之旅」(Blood Warlock Succubus Partner in the Apocalypse)など海外版が人気を集める作品も多く、「竜王的不眠之夜」(秘密の国のレイナ姫)や「我的竜系統」(My Dragon System)などの翻訳・改編漫画はプラットフォームがユーザーの反応を集計した「人気値」が億単位となっている。「斗破蒼穹」(蒼穹の剣)や「武動乾坤」(Martial Universe)などのアニメ作品は、中国電子書籍大手、閲文集団(チャイナ・リテラチャー)がユーチューブのチャンネルで公開すると登録者数は100万人、年間再生回数は2億7千万回をそれぞれ超えた。

 閲文集団傘下の海外版ポータルサイト「起点国際」(WebNobel)が配信した中国ネット文学の翻訳作品は23年末時点で約3800本となり22年比で31%増加した。閲覧回数が1千万を超えた作品は238本に上る。女性向けネット文学サイト「晋江文学城」も23年12月までにタイやベトナムなど20数カ国・地域に進出している。

 中国オーディオビジュアル・デジタル出版協会が支援する「2023中国ネット文学海外進出動向報告」によると、中国のネット文学は東南アジアや北米、欧州、アフリカなど40カ国・地域余りの20を超える言語に翻訳されており、中国文化を海外に広めるシステムの重要な一部になっている。

中国ネット文学、海外進出で文化交流の懸け橋に

 上海で取材をする海外のネット文学作家。(2023年12月8日撮影、上海=新華社配信)

 AI(人工知能)生成コンテンツに代表される新技術も海外進出を支える。ネット文学サイトにAI翻訳や海外進出などのサービスを提供するため17年に設立された推文科技は、これまでに100以上のサイトと提携。小説7千作品以上が同社で翻訳され海外に配信された。

 閲文集団もAI生成技術に注力し、ヒトと機械の協業によるAI翻訳モデルを絶えず高度化している。英語やスペイン語、インドネシア語、ポルトガル語、ドイツ語、フランス語、日本語などに対応するほか、読者が訳文の誤りを修正できる機能も盛り込み、修正をAIにフィードバックすることで事後学習をさせている。同集団の侯曉楠(こう・ぎょうだん)最高経営責任者(CEO)は「今後も技術革新を続け、AI生成コンテンツをネット文学の加速器にする。同時にグローバルなコ・クリエーション(共創)プラットフォームを構築し、海外のクリエーターを育て、オープンで多元的なコンテンツ・エコシステムを築いていく」と語った。(記者/毛振華、宋瑞)

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