転職が決まった時に提示される年収、最も増えた業界は?5年前比で60万円増の業界も【ランキング】


企業が転職者の採用を決めた際に提示する年収「決定年収」。2023年度は5年前より平均で32万円アップしたーー。

人材サービス「パーソルキャリア」が運営する転職サービス「doda(デューダ)」は4月24日、こんな調査結果を発表した

なぜ決定年収が増えているのか。そして、どういった業種がどれくらい増えているのか。発表の内容をまとめた。

なぜ決定年収は増加傾向?

発表された調査では、2019年度から5年間の決定年収の伸びをみている。

dodaによると、20年度は新型コロナの影響で多くの企業が採用活動を中止したものの、事業を続けるうえで欠かせない経験者採用は行われた。経験者は年収が高めな傾向にあり、決定年収は微増したと考えられる。

21年度は、業態変革や新規事業に乗り出したり、DXを推し進めたりする企業などが急速に増え、専門性やスキルを持つ人材の獲得競争が白熱。採用時の年収を引き上げる企業が多く見られた。

22年度以降は緩やかに景気の回復基調が続き、23年の春闘では賃上げ率が30年ぶりの高水準になった。

さらに同年5月には新型コロナが5類に移行し、経済活動の再開が本格化。転職求人倍率(転職における有効求人倍率)が3倍近くになっている。

採用難易度はますます高まっており、採用時に提示する年収を引き上げる動きが顕著になっているという。

では、どのような業種の決定年収が増加しているのか。5年前と比較し、最も上がり幅が大きかったのは「金融業界」の62万円増だった。

金融機関も登録型人材派遣やITシステムの開発・提供などが行えるようになったほか、「貯蓄から投資へ」のトレンドに乗って積極的なビジネス展開を見せる。

新規事業やITに精通する専門人材を採用するため、年収を引き上げる企業が増えた。

採用するターゲット層を40歳代まで広げているほか、一部企業がDXやIT、事業企画など、一部の職種に「エキスパートコース」を設けて高い年収を提示していることも要因という。

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決定年収の上昇幅ランキング

また、dodaは2022、23年度の転職者のデータをもとに、15の業種別に平均決定年収を算出。

その結果、23年度の決定年収の上昇幅(前年度比)が最も大きかった業種は「外食」(29万円増)だった。続いて、電気やガスなどの「エネルギー」(17万円増)、「運輸・物流」(12万円増)などだった。

外食業界は、インバウンド需要の回復を見据え、新規やデリバリー専門店の出店を再開させる動きが加速。海外進出を目指す動きも見られ、「店長」や「海外店舗開発」、「調達企画・バイヤー」の人材ニーズが急増したという。

電力の小売りが全面的に自由化されたエネルギー業界では、相次ぐ新電力の参入で顧客争奪戦が激化し、営業力強化に向けた人材獲得などを目的に賃上げを実施している。

運輸・物流業界では、24年4月から始まった時間外労働の規制を前にドライバーの待遇を改善。配達向けのドローン開発など、技術系人材の獲得にも力を入れており、決定年収にプラスに作用したとみられる。

一方、15業種の中で唯一決定年収が減少したのが、「旅行・宿泊・レジャー」(6万円減)だった。

新型コロナの5類移行後、国内・海外問わず旅行需要が急増し、訪日外国人客も多く訪れるようになった。そのため、店頭営業やフロントスタッフの人材獲得が急務になり、特にフロント職の未経験採用を拡大させた結果、決定年収が下がったと考えられるという。

なお、2023年度にdoda経由で転職した人で決定年収が増加した人は、58.5%。減少した人は40.4%、変わらなかった人は1.1%だった。

業種別の決定年収上昇幅ランキング

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