【首都圏近郊の秘境】まだ間に合うお花見登山「西丹沢・畦ヶ丸山」なら桜だけじゃない欲張りプランを楽しめるんです

表丹沢の喧騒を避けて、西丹沢まで足を延ばしてみましょう(撮影:矢島慎一)

今シーズンは、全国的に例年よりも少し長めに桜を楽しむことができたようですが、「まだまだお花見したりない!」という欲張りな方は、桜を求めて山に登ってみてはいかがでしょうか。標高を上げれば、4月後半の首都圏でもまだまだお花見を楽しめる場所はあるんです。

4月末に登るならおすすめしたいのが、丹沢の西エリアに位置する標高1,292mの「畦ヶ丸山」。この時期は淡い春色に萌える山々を眺めながら、適度な歩き応えを味わえるうえ、桜以外にもたくさんの春の花々を見つけられる人気ルートです。

■スタートは、西丹沢ビジターセンター

このエリアの登山基地「西丹沢ビジターセンター」

西丹沢のビジターセンターが、畦ヶ丸登山の起点となります。

駐車場スペースがしっかりあるので、マイカーでのアクセスがおすすめ。最寄りの新松田駅発のバスは1時間〜1時間半に1本ほどなので、乗り逃してスタート時間が大幅に遅れないように注意しましょう。

おすすめしたいのは、西沢から善六のタワを経由して山頂を踏み、大滝沢を下って大滝橋へと出てくるルート。コースタイムで5時間半ほどとしっかり歩き応えがあり、春らしい植物の変化に富んだ選択肢だ。シンプルに山頂を往復してもいいが、個人的に春の大滝沢は格別美しいと思っているので、体力に不安がない方ならぜひこちらを歩いてみてください。

■西丹沢らしい、美しい沢を横目に標高を上げていく

ルートは魚の姿がはっきり見えるほど透明度の高い沢沿いを進みながら、じわじわと標高を上げていきます。

落差60mもの滝に寄り道できる下棚への分岐を機に、登山道は沢沿いを外れて山中へと延び始めます。ここからは山頂までずっと登りが続くので、日射しが強く気温が高い日はこまめな水分補給と休憩を挟み、周りの植物を愛でながらじっくりと登りましょう。

斜度が上がり始めると植生が一気に変わります。今の時期は、紫やピンクのツツジや真っ白なアセビの花も楽しめるでしょう。

■桜の見どころは山頂のちょっと先

山頂までの稜線上では、たくさんの花をつけたアセビの大木を見ることができます。畦ヶ丸の名前は、このアセビの木が多いことが由来となっているという説もあります。

桜のお花見が目的であれば、山頂で折り返さず足を延ばしてみましょう。少しだけ先に、桜とアセビのトンネルをくぐれる写真映えスポットがあります。

ちなみに、西丹沢の山中に咲いている桜はヤマザクラ、マメザクラ、オオシマザクラなどが混在しているそうです。写真に撮っておいて、下山後に西丹沢ビジターセンターで答え合わせをしてみたり、街中でもよく見るソメイヨシノとの違いを考えてみるのも面白いと思います。

■下山は別の沢沿いから

帰路は畦ヶ丸山頂から南へと稜線を進み、大滝上の分岐から下って大滝沢沿いを歩くルートがおすすめです。

大滝橋で車道に出てから西丹沢ビジターセンターまで、少し登り返す手間はありますが、それを差し引いてもあまりあるほど気持ちの良いルートだと思います。

沢筋では、斜面一面を埋め尽くすミツマタのドライフラワーが見られるのも圧巻。ミツマタの花を楽しみたいなら、3月に登ってみるのも良いでしょう。

■丹沢の混雑とは無縁な良ルート

首都圏からのアクセスの良さもあり、この時期の表丹沢は非常に混雑します。しかし、少し奥の西丹沢まで足を延ばせば、そんな混雑とは無縁の静かな春山を楽しむことができるでしょう。畦ヶ丸は山頂からの展望はありませんが、山を歩くことや植物観察を満喫したい方には、こちらも休日の選択肢になると思います。

春らしい淡い色合いの山肌

桜が終わって5月の連休が明けると、次はお向かいの山・檜洞丸に初夏の到来を告げるシロヤシオやトウゴクミツバツツジが咲き誇る時期が始まります。数年に一度の周期で満花の年を迎えるそうなので、今年が当たり年かどうか、続けて歩きに行ってみるのも良いかもしれません。

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