【U―23】延長劇勝で五輪王手も武田修宏氏は〝注文〟「もっとクロスの質を上げないと」

Uー23日本代表・細谷真大

U―23日本代表が25日に行われたパリ五輪アジア最終予選を兼ねるU―23アジアカップ(カタール)準々決勝のカタール戦で、延長戦の末に4―2と勝利して8大会連続の五輪出場に王手をかけた。元日本代表FW武田修宏氏(56=本紙評論家)は決勝弾のFW細谷真大(22=柏)を高く評価する一方で、早々に10人となった相手に苦戦した試合内容に〝注文〟も付けた。

勝負を決めたのは、今大会無得点と苦しんでいたエースだ。

2―2で迎えた延長前半11分、MF藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)の縦パスに反応したFW荒木遼太郎(FC東京)が絶妙のタイミングでスルーパス。これに抜け出した細谷が右足で豪快に突き刺し、値千金の勝ち越しゴールを奪った。

延長後半7分にはFW内野航太郎(筑波大)のゴールでダメ押し。日本は苦しみながらも、開催国カタールを撃破して準決勝進出を果たした。

ヒーローとなった細谷は「試合を重ねるたびに悔しい思いが強くなった。その中でもやり続けるしかないと思った」と不振に苦しみながらも大仕事をやってのけ、安どの表情を浮かべた。

武田氏はそんな細谷を「体の強さだったり、起点になるところもある」と高く評価。「FWは結果が出るとノッてくる。次の試合から吹っ切れていくはず。この1点でどんどん調子が上向くだろう」とエースの復活に太鼓判を押した。

この日は前半41分に相手のGKアブドラハが細谷への〝飛び蹴り〟で一発退場。数的優位になって1―1で前半を折り返した後、後半開始から大黒柱の松木を下げてFW藤尾翔太(町田)を投入する采配も注目を集めた。

松木は前半30分に警告を受けていた状況もあり、武田氏は「勝つことが大事ということなんだろう」と退場者を出すリスクを避けた指揮官の冷静な判断を強調。「その後2トップにして点を取ったから成功した」と采配を評価した。

大きな1勝となったが、武田氏は〝注文〟も付けた。大岩監督が「自分たちで難しくしてしまった側面もある」と振り返ったように、早い段階で10人となった相手に数的有利ながら一度は逆転を許し、同点とした後も攻めあぐねて延長までもつれ込んでしまった。

武田氏は「これだけクロスを上げて決めきれない。勝ったのは良かったが、もっとクロスの質を上げないと厳しくなるかもしれない」と今後の戦いへ警鐘を鳴らす。

イレブンの戦う姿勢にも改善を求める。「カタールの選手が10人で(疲労のため)足がつったり、涙を流したり、頑張っている姿を見ると、日本は11人なんだから、もっとそれ以上に頑張らなきゃいけないと思う。もっともっとハードワークしていかなきゃいけない」とさらなる死闘が予想される4強の戦いへ〝闘魂〟の重要性を訴えた。

29日(日本時間30日)の準決勝は、勝てば8大会連続の五輪出場が決まる大一番。エースの活躍と武田氏が指摘した課題がカギになりそうだ。

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