40代非正規雇用、老後に受け取れる年金はいくら?

3人に1人が非正規雇用者の今、老後への不安はより大きなものとなっています。

厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、正社員・正職員と正社員・正職員以外の賃金には10万6,700円もの差があります。また、現在の収入だけでなく、非正規雇用は老後に受け取れる年金も限られます。

老後のお金の不安から抜け出し、安心な老後を実現するために、非正規雇用者の老後への備え方について解説します。


今の働き方で受け取れる年金は?

まずは、非正規雇用者がどれくらいの年金を受け取れるのかをみてみましょう。

厚生年金に加入していない場合、受け取れる年金は老齢基礎年金のみとなるため、年金受給額そのものが少なくなります。

2023年度の65歳以降に受け取れる老齢基礎年金は、満額(40年間加入)で年額79万5,000円となっています。月額に換算すると、約6万6,250円です。加入期間が短ければ、その分、受給額も少なくなります。

自分が将来どれくらいの年金を受け取れるかを把握するために、「ねんきん定期便」を確認してみましょう。「ねんきん定期便」は毎年誕生日月に郵送されます。また、「ねんきんネット」では、パソコンやスマートフォンから年金記録を確認できるだけではなく、条件を設定して将来受け取れる年金見込額をシミュレーションすることも可能です。

受け取れる年金は人によって大きく異なります。老後への備えは、自分が受け取れる年金見込み額がどれくらいなのかを確認するところからはじまります。

老後に必要な生活費はどれくらい?

次に、一般的に老後にどれくらいの生活費がかかるのかを考えてみましょう。

総務省の「家計調査年報(2022年)」のデータから、老後に必要な生活費の目安がわかります。65歳以上の「夫婦のみの世帯」の毎月の消費支出の平均額は23万6,696円、「単身世帯」では14万3,139円となっています。

居住地域や生活スタイルによって必要な生活費は異なりますが、老齢基礎年金だけでは老後の生活は厳しくなることが予想されます。特に、一般的にまとまった退職金が支給されない非正規雇用者の場合は、計画的に自分で老後に備える必要があります。

非正規雇用でも厚生年金に加入できる可能性も

非正規雇用であっても、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上である場合、厚生年金に加入できます。

また、短時間労働であったとしても、以下の条件を満たせば厚生年金の加入対象となります。

1.週の所定労働時間が20時間以上

2.所定内賃金が月額8.8万以上

3.2か月を超える雇用の見込みがある

4.学生ではない

現在は厚生年金の被保険者数が101人以上の企業等が対象となっていますが、2024年10月からは厚生年金の被保険者数が51人以上の企業等が対象となります。厚生年金の適用拡大は進んでいるので、ご自身が加入対象となる可能性はないかを確認してみましょう。

ただし、厚生年金は現役時代の収入と加入期間によって老後に受け取る年金額が決まります。そのため、今から厚生年金に加入できたとしても、もらえる年金額は収入と加入期間によるため、加入したから安心というわけではありません。また、働き方や勤め先によっては、厚生年金への加入を希望したとしも、必ずしも叶うとは限りません。

ご自身が今すぐできる対策として、老齢基礎年金に上乗せできる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「国民年金基金」があります。

iDeCo、国民年金基金ともに、掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されるメリットがあります。また、将来的に受け取る年金も公的年金等控除の対象となり、年金にかかる税金を軽減できます。

iDeCoで老後資金を準備する

iDeCoは公的年金に上乗せする私的年金の1つです。金融機関を通して専用の個人口座を開き、あらかじめ選ばれた運用商品(投資信託、預金など)のなかから、金融商品を選択し、毎月決まった額を積み立てて自分で資産運用します。

60歳になるまでお金を引き出すことはできません。将来受け取る年金は選択した商品の運用実績によって変わります。

国民年金に加入している非正規雇用者の掛金上限は、月額6万8,000円(年間81万6,000円)となっています。毎月5,000円以上、1,000円単位で任意に掛金を設定することができます。途中で掛金を変更することも可能ですが、変更は年1回までと決まっています。

たとえば、「単身世帯」の毎月の生活費の平均額14万3,139円を年金で受け取るには、iDeCoの掛金はどれくらい必要になるかを試算してみましょう。

仮に40歳の女性が60歳まで月6万4,000円を年利3%で積み立てたとします。すると、61歳から90歳までの間、約月7.7万を受け取れます(受取期間中は年利1.5%で運用)。老齢基礎年金の受給額が月額約6万6,250円(満額)なので、iDeCoとあわせると、単身世帯の生活費平均額をカバーできます。

ただし、iDeCoは自己責任で運用するため、選んだ金融商品によっては、支払った掛金の合計よりも、老後の年金額が下回ってしまう「元本割れ」の可能性がある点には注意が必要です。長期で継続することで、元本割れのリスクを軽減することも可能ですので、税金の控除を受けながら老後資金を準備していきましょう。

また最近の物価上昇(インフレ)に対応するためにもiDeCoは有効です。お金の価値は物価上昇によって目減りしてしまうため、物価上昇に負けない資産としてiDeCoへの積立を活用してみてはいかがでしょうか。

国民年金基金で老後資金を準備する

次に国民年金基金についてみていきます。国民年金基金は、加入時に受け取れる年金額が確定しています。運用実績次第で受け取れる年金額が変わるiDeCoとの大きく異なる点です。

掛金は加入時の年齢と選択した年金の型により決まります。非正規雇用者の場合、掛金の上限はiDeCoと同じ、月額6万8,000円(年額81万6,000円)に定められています。一度加入すると自己都合で脱退することはできません。加入口数を増やしたり、減らしたりすることができるので、支払いが難しい状況になったときには掛金を減額できます。余裕のある場合は、掛金を前納すると割引を受けることもできます。

iDeCoと比較しやすくするために、同じように40歳女性が60歳まで月約6万4,000円の掛金を設定した場合、受給額がどうなるかを確認してみましょう。

・加入年齢 40歳2ヵ月
・A型(終身年金・15年間保証) 6口
・Ⅲ型(15年確定・60歳支給開始・15年間保証) 6口
以上の条件で加入すると、毎月の掛け金は6万1,610円となります。

受給額は、60歳から65歳までは月額約3万1,500円、65歳から75歳までは月額約7万3,500円、75歳以降は月額約4万2,000円の終身受け取りとなります。加入年齢によって保険料や受給額は大きく変わります。国民年金基金のWebサイトで詳しいシミュレーションができるので活用しましょう。

国民年金基金は、加入したときに将来の年金額が決まる仕組みです。そのため、物価上昇(インフレ)が進み続けると、将来受け取る年金の実質的な価値が、今より下がっている可能性もある点には注意が必要です。

iDeCoと国民年金基金は併用できます

iDeCoと国民年金基金は併用が可能です。ただし、掛金の限度額は共通のため、両方に加入する場合は、限度額内におさまるよう調整が必要となります。どちらか一方に加入することも、両方に加入することも選択肢の一つです。どちらも掛金を増減できるので、両方に加入し、その後の余裕資産や運用評価を見ながら掛金を調整することができます。

iDeCoと国民年金基金の比率についてのご質問をいただくことがありますが、正解はありません。ある程度のリスクを取っても将来受け取れる年金額を増やしたい、終身の年金受取にこだわらない場合はiDeCoを、将来受け取れる年金額をあらかじめ確定させたい、終身で年金を受け取りたい場合は国民年金基金を考えてみるのもいいかもしれません。それぞれの特徴についてよく理解した上で、自分に合った老後資金の準備方法を見つけることが重要です。

安心な老後実現のために

まずは老後の生活を具体的にイメージすることからはじめてみましょう。さまざまな選択肢があり、それぞれのメリット・デメリットを理解することは難しく感じるかもしれません。しかし、40代非正規雇用者にとって、老後資金準備のための資産運用を行わないことが一番のデメリットです。

自分が将来受け取ることができる年金額を確認し、これからの人生で必要になりそうな費用を明確にした上で、できるだけ早く老後資金づくりを始めることが、安心な老後の実現に繋がります。

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