白洲迅「これをやっている役者がいるんだ。俺はやってないな」舞台は「好きというより、修行の場」

白洲迅 撮影/冨田望

第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストをきっかけに、2011年に、舞台『ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン』でデビューした白洲迅。’13年にはテレビドラマ『押忍!!ふんどし部!』(テレビ神奈川ほか)で初主演を飾るなど、その後も、映像、舞台を問わずに活躍し、近年では『刑事7人』(テレビ朝日系)の野々村拓海役でも知られる。デビュー以来、進化し続ける白洲さんのTHE CHANGEとは――。【第4回/全4回】

挑戦は“するべきときに来るんだ”と感じた

昨年、31歳になった白洲さん。吉田鋼太郎さんが演出を手掛ける、5月公演の舞台『ハムレット』で、初めてシェイクスピア劇に挑む。

――今回、『ハムレット』に出演した理由を教えてください。

「30歳を超えて、何かまたひとつ大きな挑戦をしなきゃいけないと思ったというか、求めていたんですよね。正直、僕の経験値的にもシェイクスピア、しかも『ハムレット』に挑むとなると、相当苦労もするだろうし、大変なのは明白でした。でもそういった挑戦をしなきゃいけないというか、挑戦は“するべきときに来るんだ”と感じました。長い間お世話になっている鋼太郎さんに演出していただけることも、大きな決め手でした」

――吉田さんとは稽古に入る前に何かお話しされていたのでしょうか。

「今回のお話は、去年の夏ぐらいにいただきました。吉田さんとはドラマ『刑事7人』(テレビ朝日系)でずっとご一緒してきたんですけど、ちょうどその撮影中でした。それで“『ハムレット』のお話をいただきました”と話したら、“やるかどうかは白洲次第だけど、もし一緒にやれるなら、頑張ろうぜ”と言っていただいて。背中を押されました」

白洲迅 撮影/冨田望

――シェイクスピア劇というのは、特別な思いを抱くものですか?

「このシェイクスピア・シリーズは、蜷川幸雄さんの演出で続いてきて、僕も何度か見に行かせていただきました。そのとき、“やりたい”なんて簡単には口にできないけれど、心のどこか片隅に、自分と同じ役者で“これをやっている役者がいるんだ。俺はやってないな”という気持ちはあったと思います」

シェイクスピア劇は“大きな壁”、舞台には苦手意識も

――今回、実際に舞台に立ちます。シェイクスピア劇は、白洲さんにとってどういった存在なのでしょう。

「大きな、大きな壁です。僕はあまり舞台を数多くやってきているわけでもないですし、苦手意識みたいなものが実はあります」

――そうなんですか?

「“舞台が好きです”と明言される役者さんもいらっしゃいますが、僕はそんなふうには言えません。僕にとって舞台は、好きというより、修行の場です。だからこそ、間が空くと不安になります。

今回も前回の舞台から2年くらい期間が空いていますが、そうするとぬるま湯につかっている感覚になるんです。もちろん普段のドラマや映画の現場がぬるま湯というわけではありません。でも舞台には、また違う特別な大変さがあります。それに、とても贅沢(ぜいたく)な時間だと感じます」

白洲迅 撮影/冨田望

ひとつの作品に長い時間をかけて取り組む贅沢さ

――贅沢な時間ですか。

「今回でいえば、稽古に1か月半以上ある。ひとつの作品に、それだけ長い時間をかけてじっくりとみんなで議論し合いながら向き合っていく。その時間がすごく贅沢だなと。いまはまだ読み合わせが始まった段階ですが(取材は3月下旬)、もう台本がボロボロになり始めてるんです。それくらい、ずっと自分の手元に置いてるんですよね。

映像作品だとあまりないことです。特にドラマは3か月で10話ぐらいを撮影していくわけですから、1話が終わったら、その台本をまた開くといったことは基本的にない。だから台本がボロボロにはならない」

白洲迅 撮影/冨田望

――『ハムレット』は、公演スタートまでまだひと月半近くあります。

「それがもう、少しボロくなってきていて。味が出てきている台本が、なにかちょっと嬉しいです。相棒のように感じるというか。そんな発見もあって、改めて舞台っていいなと、いま思っているところです」

もともとミュージカル『テニスの王子様2ndシーズン』が俳優としてのデビューだった白洲さん。舞台は修行の場であって「好き」とは言えないと口にしつつ、熱く語る姿はハマっているのが明らか。初のシェイクスピア劇で、「するべき挑戦」を果たす白洲さんを、この先も舞台や映像作品でたくさん見ていきたい。

白洲迅(しらす・じん)
1992年11月1日生まれ、東京都出身。’11年、舞台『ミュージカル テニスの王子様』の鳳長太郎役でデビュー。’13年には『押忍!!ふんどし部!』(テレビ神奈川ほか)にてドラマ初主演。ドラマ、映画、舞台と活躍している。主な出演作にドラマ『ごめんね青春!』(TBS系)、『刑事7人』(テレビ朝日系)シリーズ、『僕はまだ君を愛さないことができる』(フジテレビ)、『リコカツ』(TBS系)、大河ドラマ『どうする家康』(NHK)、『君が心をくれたから』(フジテレビ系)、映画『HiGH&LOW THE WORST』(2019年)『向田理髪店』(2022)など。’24年5月公演の吉田鋼太郎演出、彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』でホレーシオを演じる。

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