血友病患者の肝移植成功 長崎大学病院 世界初の術式で

肝臓のイメージ図

 長崎大学病院(長崎市)は25日、血友病患者に肝臓の一部である「右後区域」だけを移植する手術を実施したと公表した。患者と臓器提供者(ドナー)はいずれも既に退院した。血友病患者への肝移植で、右後区域だけの移植に成功したのは世界で初めて。同病院は従来よりドナーの負担が軽減され、血友病患者が治療の選択肢として肝移植を選びやすくなるとしている。
 血友病は血を固める「血液凝固因子」が不足、欠乏している病気。一度出血すると止血に長い時間がかかり、急激な大量出血で貧血や失血性ショックを起こす恐れがある。肝移植は手術の中でも切開の範囲が広く、大量出血のリスクが高いため、血友病患者の場合は特に難しいとされる。
 今回の手術は2月28日、血友病患者でC型肝硬変と肝臓がんを患った60代男性に、30代ドナーの肝臓の一部を移植した。従来、血友病患者への肝移植は肝臓の右葉か左葉のいずれか全部が選択肢だったが、今回は右葉外側部分の右後区域だけを移植。これにより、ドナー側に全体の6割以上の肝臓を残すことができた。
 手術中の血液凝固の評価・管理に、同病院麻酔科の原哲也教授の研究成果を採用した。患者は手術後47日目に退院。ドナーは手術から8日目に退院し、既に社会復帰した。

© 株式会社長崎新聞社