ドラッグストアのエリア別競争力の調査を実施(2024年)~国内ドラッグストア市場 地方部ではM&Aによる上位企業への集中が進む~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のドラッグストア市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.調査結果概要

本調査では、ドラッグストアチェーン経営企業の売上高から国内のドラッグストア市場規模を推計するとともに、各地方別の競争力を分析した。
8つの地方別に見ると、北海道、東北、中国、四国、九州・沖縄地方の地方部では、大手企業による地場のドラッグストアチェーンの買収といった要因もあり、上位企業への集中が起きている。一方、関東、中部、近畿地方では比較的上位企業への集中が起きておらず、東京や大阪など大都市圏では、ドラッグストアチェーン経営企業各社による僅差のシェア争いが生じている。

2.注目トピック~「M&A」「調剤」「プライベートブランド」「海外展開」がキーワードに

ドラッグストア市場では、「M&A(企業の合併・買収)」「調剤事業」「プライベートブランド(PB)」「海外展開」の4つがキーワードになると考える。

まず、近年、大型ドラッグストアチェーン経営企業同士の合併による規模拡大、食品スーパーの買収による食品事業の強化などが進んでいる。縮小する国内小売市場にあっては、M&A(企業の合併・買収)によるシェアや事業領域の拡大、経営の合理化が今後も重要になると考える。

ドラッグストアの調剤対応は、調剤専門の門前薬局(敷地外だが病院のすぐ近くにある調剤薬局)が大半の処方箋を応需していたこともあり、以前は必ずしも進んでいるとは言えなかった。そのため、ドラッグストアチェーン経営企業の調剤事業は、長らく調剤専門薬局での展開が主流であった。今後、高齢化や面分業の拡大により、ドラッグストアでの処方箋医薬品の需要は一層高まるとみられる。調剤報酬や薬価改定の影響を受けるものの、調剤事業は専門性が高く、食品スーパーやディスカウントストアなどとの差別化要素となり得る。

PB商品は、粗利益の向上や他社との差別化戦略を目的として開発に注力する企業が多い。近年、付加価値の高い高価格帯のPB商品も注目を集める。ドラッグストアの製造小売業(商品の企画~販売までを担う事業)としての一面が強まると考える。

海外展開は、アジア各国をターゲットに据える企業が見られる。国内売上高と比べると、ドラッグストアチェーン経営企業各社の海外売上高はまだ小さいものの、今後の人口増加が見込まれるアジア市場での事業展開に各社が取り組んでいる。

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