【ポイント解説】介入あるか?円安進行の中、日銀・植田総裁がきょう午後会見 1年半前には日銀会合直後に介入の事例も

外国為替市場で円安の流れが止まらない。1ドル=155円という節目を超えて円安が進んでも、政府は、円買い介入に踏み切っていない。

こうしたなか、日銀は、26日、金融政策決定会合の結果を公表し、植田総裁が会見するが、市場関係者の間では「1年半前に円買い介入が実施されたときと同じ状況だ」との見方も浮上している。

米財務長官 介入は「まれな状況のみ」

円だけでなく、世界の主要通貨が軒並み対ドルで下落傾向を見せ、ドル独歩高の様相が強まるなか、ワシントンで17日に開かれた日米韓による財務相会合では、共同声明に「最近の急速な円安・ウォン安への日韓の深刻な懸念を共有する」との文言が盛り込まれた。

続いて開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議は、共同声明で、「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得る」とした過去の合意事項を再確認し、財務省の神田財務官は「日本の主張に沿った形になった」と強調した。

こうした流れについて市場関係者の間からは、為替の急速な変動はよくないとするコンセンサスのもと、仮に日本が円買い介入を行う場合もこの枠組みに沿ったものであることを確認しておくことで、介入に向けた地ならしになった、との見方も出ていた。

一方で、介入の効果については、アメリカ金利の高止まりによる日米金利差という構造的な要因にあらがうのは難しく、アメリカが利下げ局面に入るまでの時間稼ぎにしかならないとの声も強い。

こうしたなか、アメリカのイエレン財務長官は、25日、ロイター通信の取材に対し、他の国が為替介入を実施する場合について「市場の混乱や過度な変動に対処するため、まれな状況でのみ受け入れられる」との認識を示し、事前協議が望ましいとの考えを示した。

「金利」と「円相場」めぐる植田総裁のさじ加減

26日、市場の関心が集まっているのは植田総裁の発言だ。

植田氏は、アメリカ・ワシントンでのG20財務相・中央銀行総裁会議後の18日の会見で、円安進行による物価高について、「無視できない大きさの影響になれば、金融政策の変更もあり得る」と述べ、輸入品の価格が上昇して、基調的な物価上昇に影響を及ぼす事態になれば、追加利上げも辞さない姿勢を示した。

さらに、19日に現地で行われた講演で「基調的な物価上昇が続けば、利上げを行う可能性が非常に高くなる」と述べたうえで、「金利を引き上げる場合、経済や物価がどう反応するか大まかな見通しを持っておく必要があるが、日本はこの30年間、持続的に金利が上昇したことがない」と話し、「過去のデータを使って反応を推定するのはとても難しく、私たちにとってチャレンジになる」との認識を示した。

植田総裁を悩ませていそうなのは「金利」と「円相場」をめぐる金融政策のさじ加減だ。

日銀は、マイナス金利解除後も、当面は緩和的な金融環境が続くとしていて、追加利上げは急がない方針を示しているが、その副作用として円相場では円安が進んでいる。

利上げはゆっくりと進めたい一方で、円安にも目配せしたい植田総裁から、円安進行をけん制しようという発言があるかどうかが焦点となる。

追加利上げについて「前倒し」をにおわせるような発言があれば、円相場は円高方向に振れる可能性がある一方で、「利上げを急がない」ことが強調されれば、円安が加速することが考えられる。

2022年9月の再来はあるか

2022年に24年ぶりとなる円買い介入が行われた9月22日は、日銀が当時の黒田総裁のもとで開いた金融政策決定会合の2日目だった。
「大規模な金融緩和の継続」という決定内容が公表されると、日米の金利差拡大を意識した円売りが勢いを増して、円相場は24年ぶりの水準となる1ドル=145円台に突入した。

さらに、黒田氏が会見で「当面金利は引き上げるということはない」と発言し、金融政策の先行き指針の修正は「2~3年後の話として考えてよい」との認識を示したことで、円相場が145円台後半に下落して下げ足を速め、146円をうかがう値動きになると、政府は円買い介入に踏み切り円相場は反転、1時間足らずのうちに、5円ほど円高が進む展開となった。

今回も、日銀の会合をきっかけに、円安に拍車がかかり、政府が為替介入に動くことを警戒する声が出ている。

会合では、経済・物価情勢の展望(展望リポート)が示される。初めて公表される2026年度の消費者物価指数の上昇率は2%程度となる見通しが強まっているほか、1月会合時点で2.4%の上昇を見込んでいた2024年度見通しについて、足元の円安や原油高を踏まえて上向きに修正するかについても議論され、2%の物価目標が持続的・安定的に実現する「確度」が高まっているかを判断するカギになる。国債買い入れ額減額に向けた動きがあるかも焦点だが、国内金利が上昇すれば、こちらは円相場を下支えする要因となる。

円買い介入につながった2022年9月の場面の再来はあるのか。円高方向に戻すきっかけになるのか。決定内容と植田総裁の発言に、市場は大きな関心を寄せている。
(執筆:フジテレビ解説副委員長 智田裕一)

© FNNプライムオンライン