中国ショートドラマが日本で人気、背景に「文化的共感」―中国専門家

24日、中国メディアの環球時報に、中国のショートドラマが「文化的共感」によって日本で人気を博しているとした清華大学人文社会科学高等研究所の徐仕佳研究員による記事が掲載された。

2024年4月24日、中国メディアの環球時報に中国のショートドラマが「文化的共感」によって日本で人気を博しているとした清華大学人文社会科学高等研究所の徐仕佳(シュー・シージア)研究員による記事が掲載された。

徐氏はまず、「日本でブームを巻き起こしている中国のショートドラマは、日本の映画やドラマ制作における新たなモデルとなっている。新興のインターネット企業から老舗のテレビメディアまで、多くの日本企業がこのトレンドを追随している。また、多数のショートドラマを制作しているだけでなく、日本のユーザー向けに特化したショートドラマアプリの開発に取り組む企業も出てきている」と紹介した。

続けて、「これらのショートドラマは通常、縦型で撮影され、1話当たりの長さが90秒から10分程度と、短くテンポが速いのが特徴。社会に出始めたばかりの日本の『Z世代』の若者たちに広く支持されている。2023年には、青春がテーマとなったショートドラマが、9カ月で累計視聴数4億回を超える成功を収めた。市場調査会社の予測によると、26年には日本の縦型スクリーンのショートドラマ市場の規模は10億ドル(約1500億円)に達する可能性がある。この新しい短編動画形式は大きな潜在力と機会を秘めており、日本社会の各界からの注目を集めている」と説明した。

さらに、「中国のショートドラマが日本で大ヒットしているのとは対照的に、日本の従来の映画やドラマは危機に直面している。まず、モバイルインターネットの普及を象徴とする情報革命により、エンターテイメントの手法やプラットフォームはますます多様化している。インターネットに親しんだ若者にとって、特定の時間に放送されるテレビドラマを視聴するのは時代遅れだ。また、1時間以上かかる従来のドラマと比べて、中国のショートドラマは1話ごとの時間が短く、若者のペースの速さと断片的な生活スタイルに適合している。さらに、片手でスマートフォンを操作するという習慣も、情報を受け取る際の人々の視覚慣性を変化させ、縦型動画が横型動画に匹敵する視聴体験を提供している。インターネットの視聴文化産業の隆盛も、縦型動画をより豊かにし、人々のニーズを満たしている。そのため、ますます多くの日本の若者たちが従来の映画やドラマからショートドラマへとシフトしているのだ」とつづった。

徐氏は、「社会的な要因はさておき、中国のショートドラマが日本で人気を博しているのは、『外部の助けを借りることなく、自力で目的を達成する力』によるものだ。中国企業と提携している日本の業界関係者は、中国企業は『視聴者を惹きつける物語を作り出すのが得意だ』と評価しており、具体的には中国企業が得意とするユーザーのプロファイリングが魅力的なショートドラマのキャラクターやストーリーを生み出すのに役立っている。またアルゴリズムによる推薦技術の蓄積により、企業はターゲット層を正確かつ効率的に特定できているのだ」と述べた。

その上で、「中国のショートドラマが海外進出する中で、日中の協力には主に二つのルートがある。一つは、中国のショートドラマを直接日本語に翻訳し、翻訳作品を多く揃えてコンテンツを充実させてユーザーを引きつける方法。もう一つは、中国で人気のテーマを改編して、米国や欧州の好みとは異なる日本国内向けのショートドラマを制作する方法だ。翻訳されたショートドラマの中では、日本の視聴者は『家族や結婚』について描かれたショートドラマを好む傾向がある。

これは儒教の結婚観が日本社会に長く影響を与え、日本の婚姻率が持続的に低下していることとの緊張関係に由来する可能性がある。17世紀以来、儒教思想は日本社会に大きな影響を与えており、現在でもその社会的意義は大きい。しかし、教育レベルの向上、経済の停滞、個人意識の強化などの要因が重なり、結婚は日本の若者にとって社会的な不安要素となっている。このような背景下において、結婚に関して両親の命令や仲介人の言葉が重要視される、儒教の結婚観をストーリーに取り入れた中国のショートドラマは、日本の視聴者に好奇心と共感をもたらしている」と言及した。

また、「日本国内のショートドラマに関しては、『資産家の跡取りが身分を隠してアルバイトをする』といった職場ドラマが最近のヒット作で、中国の職場の秩序や環境を改善するショートドラマと似た部分が日本の視聴者から好評を得ている。日本企業は伝統的な『年功序列』制度を採用しており、社員の収入は経験に基づいている。このような厳格な序列は若者の成長の機会や自主性を抑制しており、現代社会が求める個人の自由との矛盾を生じさせている。伝統と現実の間で生じる多くの矛盾は、このような日本国内のショートドラマの中で『職場の問題』として描かれ、中国のショートドラマが描く現実的な課題がより多く日本の若者たちの共感を呼んでいる。日本や東アジアの新世代の人々は、このようなショートドラマの制作、視聴、議論を通じて、自身が直面する複雑な職業上の困難や職場でのプレッシャーに対する疑問や反省を表現しているのだ」と述べた。

そして、「中国のショートドラマが真に規模と影響力を拡大するためには、海外進出において翻訳作品だけに頼らず『ローカライズ』が必然的な発展方向であることは間違いない。しかし、東アジア諸国間には同等の文化基盤と共通の課題があるため、この改革プロセスは中国のショートドラマの『海外進出』に独自の特徴をもたらしている。中国企業が日本に提供する『視聴者を惹きつけるストーリー』は、技術レベルでの画期的な進歩であるだけでなく、思想面での交流や中国の国際的なコミュニケーション効率を高める新たな領域を切り拓いている。アルゴリズム、文化、現実への配慮が相まって、この東アジア文化圏で広く受け入れられる芸術的な新たな形式がますます成熟し、繁栄しつつある」と結んだ。(翻訳・編集/岩田)

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